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「裁判官・検察官志望の司法修習生(予定者)ほど、大手事務所の内定を取っておくべきである」と考える理由

司法試験受験生の就活を難しくしている事情のひとつに、
― 就職先に応じて採用時期がズレているから、
が挙げられる。

司法試験受験生を対象とする採用活動は、まず、大手事務所を中心とする企業法務系事務所が優秀層を囲い込むことから始まる。次に、中小の法律事務所が、合格発表後に採用活動を始める。裁判所や検察庁は、司法修習が始まってから、法律事務所からの内定者をターゲットとして、「後出しジャンケン」の採用活動をスタートすることになる。

誰もこれが理想的な形だとは思っていないけど、
・ 合格発表前に、司法試験に落ちているかもしれない受験生も含めて内定を出せるのは、大量の内定を出せる(歩留まりがわかる)大手事務所等に限られること、
・ 1人しか採用しないような中小事務所の採用活動は合格発表後にならざるを得ないこと、
・ 裁判所や検察庁は、司法修習が始まってからしか本格的な採用活動をできないこと(でも、実務修習を通じて勧誘できるので、強力な攻勢をかけられること)
という事情が絡み合ってこんなことになってしまっている。

そういえば、商事法務ポータルの連載の第1回(2017年6月1日)も、裁判官志望者も法律事務所に就活したほうがいい、という記事だった。

ポイントだけまとめると、
― 裁判官の採用選考でも、法律事務所の内定があることは有利に働く(法律事務所の内定がないと、裁判所内で採用を検討する会議において「成績はよくてもコミュニケーション能力が低いんじゃない?」と疑われてしまうリスクが残る)
― 司法修習生(予定者)が「実は後で辞退するかもしれない」という思いを秘めながら法律事務所の内定獲得を狙うならば、その先には大手事務所を選ぶべき(ひとりしか新卒を採用しないような中小事務所の内定を辞退するのは、事務所側への痛手が大きすぎる(事務所のその年の採用活動がすべて無駄にしてしまう))
という内容だったと思う。

実際、裁判官という職種は、
― どうしても自分が裁判官になりたい!
という本人の意欲があれば「向いている」というものではなく、
ー 現役裁判官から「君は、バランス感覚もあるので、裁判官に向いている」と自分の適性を認めてもらった人
だけが自分が裁判官になることを真剣に考えればよいと思う(裁判所から声をかけてもらえない修習生は(裁判官になることなんて考えずに)堂々と弁護士になればいいと思う)。

それを言うと、
― それでは「裁判所から声をかけられたら真剣に裁判官になることを考えたいけど、仮に弁護士になるならば、大手ではなく、中小事務所がよい」という希望を抱く司法修習生(予定者)はどうすればいいか?
という質問を受ける。

その問題に対しては、
― とりあえず、大手事務所の内定を得る、
― 司法修習中に裁判官の適性を探る
― 結果的に、裁判官の適性があると認められなかったら、そのまま、あきらめて大手事務所に就職する、
― 大手事務所に入所した後で、第二新卒で、中小の法律事務所に転職活動する、
ということで解決すると思う。

転職斡旋を生業とする人材紹介業者の利益を重視したアドバイスのように聞こえるだろうけど、実際のところ、
― 中小の法律事務所でどこがいいか?
は、修習前の就活で見極めるのは超難しいので、
― 一旦、修習を受けて、大手法律事務所で数ヶ月でも働いてから、改めて、自分の適性に合った中小事務所を探る、
というほうが、ずっとミスマッチが少ないと思っている。



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