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大手法律事務所の新卒採用活動の実態(2024年ウィンタークラーク経由)

昨日(1月25日(土))に続いて、本日(26日(日))、令和6年司法試験予備試験の口述試験が行われています。そして、この口述試験が終わると、大手法律事務所の新卒採用活動が本格化します。

私は、昨年(2024年)8月に、大手法律事務所からの内定を受諾した司法試験受験生10名以上へのインタビューを実施しました。予備試験合格者に限って募集したわけではありませんでしたが、結果的に、インタビューに応じてくれた内定者全員が予備試験に合格した上での司法試験受験生でした。

現在、大手法律事務所への就活は、
(A) 学部時代のサマークラークに参加した上での応募
(B) ロースクール生時代のサマークラークに参加した上での応募
(C) 予備試験に合格した上でのウインタークラークに参加した上での応募
に分かれます(学部生のサマーとウインターに重複して参加する学生、学部生のサマー、ロー生のサマー、ウインターの3つとも参加する学生もいます)。

今年の予備試験口述試験を終えて、これから、ウインター経由での就活に臨む学生の参考に供するため、昨年のインタビューで聞かれたコメントを抜粋してご紹介させていただければと思います。

以下のとおり、内定者の発言からは、大手法律事務所の採用プロセスが、第1フェーズ(事務所側が就活生を選考するプロセス)と第2フェーズ(事務所側が決定した候補者を勧誘するプロセス)にはっきりと分かれていることを理解することができます。

この二段階プロセスは、新卒を大量採用する大手法律事務所に特有の仕組みであり、中小の法律事務所とは大きく異なる点です。そこで、末尾には、補論として「大手法律事務所の内定者は、中小事務所へ行くことを考えなかったのか?」についても尋ねた結果を紹介してみました。

第1フェーズ:大手事務所による就活生の選考プロセス

<ウインタークラークへの応募と選考基準>
・ 予備試験の論文の合格発表があると、周りはすでにウインタークラークに応募していた。自分は出遅れて、口述試験が終わってからウインタークラークの募集に気付いた。大学の期末試験が終わってから準備したら、エントリーシートをじっくり起案する時間がなかったため、慌てて書いてすべての大手に提出した。
・ 予備試験の論文試験の合格発表が12月になり、発表後からウインターのエントリーが始まったので、その日のうちにエントリーを済ませた。昨年までは最終合格が発表されてからエントリーだったが、今回からは、論文合格者から申し込めるようになった。
・ ウインタークラークは、大手法律事務所4つに応募して、大手以外は応募していない。
・ 予備試験の口述試験が終わってから大手事務所すべてのウインターに応募した。
・ 参加者と話すと、どのインターン生も大手すべてのウインターを回っている人が多い。何度も同じメンバーと顔を合わせる。メンバーが固定されていると感じる。
・ 予備試験に論文2桁順位で合格したら、すべての大手のウインターに参加できた。
・ サマークラークの書類選考はGPAで判断されるが、ウインタークラークの書類選考は予備試験の順位で判断されていると思う。
・ 学部生で予備試験に合格していれば、順位を問わずにウインターに参加できるだろうが、ロー生で予備試験に合格しても、それだけではウインターに参加できない。「順位が特に優れている」とか「他の何かプラスα」がないと、ウインターの選考通過は難しい。
・ もともと、サマークラークで評価が高かった人が、予備試験に合格してウインターにも参加する、ということもある。
・ 自分は、予備試験の順位が高かったので、ぎりぎりに申し込んでも採用してもらえた。
・ 予備試験の論文2桁合格だったら、ウインターはすべて選考を通過した。
・ ウインターでWWW法律事務所、XXX法律事務所、YYY法律事務所、ZZZ法律事務所の4つに応募したが、WWW法律事務所とXXX法律事務所に落とされた。もしかしたら、WWW法律事務所には、学部3年次にはサマーに応募したのに、学部4年の夏にサマークラークに応募しなかったことが原因で落とされたのかもしれない。

<ウインタークラーク_概要>
・ ウインタークラークはどこも2日間。
・ ウインターは、予備試験に合格していることが条件であり、学部生とロー生を区別していない。
・ ウインタークラークの内容は、4つのパートに分かれる。「事務所の説明」、「グループワーク」、「担当の弁護士からの個別の課題」、「食事」。
・ 事務所の説明では、「どういう研修制度(語学研修等)があるか」などの説明も受けた。
・ インターン生ひとりに対してアソシエイトの先生がひとり付いてくれる。パートナーが何人にひとりつくかは、事務所毎に異なる。
・ XXX法律事務所のウインターは、まず、全体でのガイダンスがあって、その後に、担当の弁護士2名と、インターン生3名とのランチがあった。その後は、プログラムとしては、模擬会議があり、1日目の夜の全体での食事会がある。
・ XXX法律事務所は、2日目は、講義(自分が興味がある分野を選ぶ)がある。その後に、パートナー弁護士、インターン生(自分1名)との面談が、2セット行われる。ひとりは採用担当パートナーだと思われる。ここでは、単純に「大学で何をしていたのか?」と聞かれた。
・ XXX法律事務所では、午後に、弁護士3人とインターン生5人との座談会が設定された。
・ どの法律事務所も、申込時のエントリーシートで「興味がある法分野」にチェックを付ける。
・ WWW法律事務所では、申込時の希望に基づいて配属部門を事務所側から指定してもらった。
・ XXX法律事務所、YYY法律事務所、ZZZ法律事務所でも、同じ法分野を希望しているインターン生同士でグループが組まれていると感じた。
・ 他の事務所は、デスクを与えてもらえていたが、WWW法律事務所のサマーは、会議室に荷物を置いて、そこから会議室に行って講義を受けたりしていた。
・ WWW法律事務所のサマーは、初日の昼と夜、2日目の食事が、インターン生一人に対して、担当パートナー弁護士、担当アソシエイト弁護士プラスもうひとり弁護士、という形式だった。
・ XXX法律事務所のサマーは、講義はほぼない。ひとつくらい。

<グループワーク_形式(一部、サマーでのグループワークを含む)>
・ XXX法律事務所は、弁護士の先生が仮想クライアントを担当してくださり、インターン生がzoom面談でクライアントの質問に答える形式だった。
・ XXX法律事務所は、インターン生6名が、クライアント役の弁護士と模擬会議をした。
・ WWW法律事務所は、模擬交渉だった。インターン生のグループを2つに分けて、お互いにパートナーの先生がひとりずつ付いてくれる。それぞれのチームに目標達成の値が渡されて「クライアントのベストの結果を出しなさい」という指示を受けた。
・ WWW法律事務所では、模擬交渉をした。事案は和解交渉で、自分の配属された側が有利な立場だったので、交渉も比較的に有利に進めることができた。
・ WWW法律事務所は、インターン生4名対インターン生4名のチームに分かれての交渉。タームによって題材は違うだろうが、同じタームだと、題材は同じ案件を扱っていた。実例に基づく案件の資料をその場で見せられて、20~30分間、チームで相談して方針を立てる。交渉したら、また持ち帰ってチームで相談する。それを繰り返して、最終的にどういう結論で和解するか。弁護士が案件の相談には参加せずに、その様子を見て審査している。
・ ZZZ法律事務所は、内部会議を模した形式だった。
・ YYY法律事務所では、グループディスカッションをした記憶がない。
・ XXX法律事務所は、模擬会議の比重が重くないと思う。細かくひとりひとりが審査されているイメージがない。
・ WWW法律事務所は、ウインタークラークで、「模擬交渉」と言われる3:3の議論をした。契約書案を使って、自分のクライアントに有利な契約を結ぶための交渉を行う。
・ XXX法律事務所は、クライアントとのリモート会議を行って、そこでどう立ち回るかを見られていた。
・ グループワークは事前に対策をする方法がない。自分は、学部3年次のサマーで初めて経験したが、翌年4年次には、経験がある分だけうまくなったところはある。
・ どの事務所もグループワークの内容は似通っている。M&Aに絞ったら、SPAなどの課題も似たものとなるので、ある程度の勘所はわかってくる。1回経験すれば、同じ季節の次に開催されるインターンにも応用が効く。初めて参加した事務所よりも、2回目、3回目の方がうまくいく、というのが「あるある」。
・ 学部3年次のサマーで、ZZZ法律事務所で模擬会議をやったことがあったので、翌年4年次にXXX法律事務所のグループディスカッションでは結構うまく出来たと思う。
・ グループワークに自信がない状態でインターンに参加したら、「負の烙印」が押されてしまうリスクはある。
・ グループワークでは、他の参加学生を「できる」と感心することもある。
・ グループワークは周りはみんな「就活モード」。リクルート目的でサマーに参加していることは明白である。
・ XXX法律事務所のサマーでは、模擬交渉を行なった。M&Aの買う側と売る側に分かれた交渉だった。
・ WWW法律事務所のサマーは、2日目の朝に、問題が提示されて、インターン生同士が4人くらいのグループに分かれてグループ対抗のディベートを行う。3時間くらい行う。参加者はインターン生だけで、弁護士はそれを見ている。
・ XXX法律事務所でも、グループディスカッションは行われた。5〜6人のグループに分かれてクライアントからの質問に答える、という形式だったが、事前の打合せもなく、緩めの雰囲気だった。グループ内で回答者を選んで回答するが、その都度、弁護士からは「こうしたらいいんじゃないか」というコメントが入る。
・ ZZZ法律事務所のサマーでは、グループワークで内部模擬会議を行った。
・ YYY法律事務所の学部生対象のサマークラークでは、グループワークがなかった。能力よりも人柄を見ているような気がした。
・ YYY法律事務所では、グループディスカッションはなかった。
・ XXX法律事務所は、グループワークで、模擬会議(クライアントとの模擬会議)をした。
・ XXX法律事務所は、インターン生6人が集められてグループワークをした。交渉というよりも、クライアントへのリーガルアドバイスを行うものだった。内容は、コーポレートだけでなく、倒産の視点、労働の視点からのアドバイスも求められた。インターン生は「どの法の視点からアドバイスするか」を選べたので、自分は真っ先に挙手して「コーポレート」を選んだ。自分は経済法選択だったが、独禁法の視点は聞かれておらず、倒産と労働は勉強していなかったのが理由である。
・ WWW法律事務所は、模擬交渉を行った。インターン生が3:3又は4:4に分かれて、まずは自分達チームで会議をして、その後に、相手方との一次交渉をする。また、自分達チームで作戦会議をした後に、二次交渉をして終了となる。内部の作戦会議の様子も審査されていた。

<グループワーク_英語>
・ XXX法律事務所は、英文の契約書をレビューして問題点を指摘してブラッシュアップしていく模擬会議形式だった。自分は英語ができないので苦労した。
・ XXX法律事務所では、資料が全部英文だった。アウトプットの書類は日本語で作成して提出したが。
・ XXX法律事務所のグループワークの資料は、日本語だった。
・ グループ・ディスカッションで英語の資料が出されたことはなかった。

<グループワーク_選考方法>
・ どこの事務所でも、グループワークで議事録を作成しており、誰(インターン生)がどこで発言したかを記録して採用選考の資料にされていた。
・ グループディスカッションのグループの中から、ひとりずつに内定を出しているのではないか、と推察している。
・ WWW法律事務所は、グループディスカッションのグループでひとりを選抜していると感じた。
・ WWW法律事務所では、チームから1人が選出されるわけではない。同じチームにいたインターン生も自分とは別に内定をもらっていた。そもそも、模擬交渉のチームは、同じ部門のインターン生だけで組んでいるわけではなく、他の部門のインターン生も混ぜたチーム編成がされている。自分は、配属部門のパートナーが自分の模擬交渉を見てくれていたが、他の配属部門のインターン生については、模擬交渉を見ていたパートナーが他の配属部門のパートナーに評価結果を伝達しているのだろうか。
・ WWW法律事務所では、役割分担しつつ、自分のターンの時に発言をしたが、相手側の立場にも配慮することを意識した。これは、その前に参加したZZZ法律事務所での経験が生きている。ZZZ法律事務所の模擬会議で、同じ会議に、めちゃくちゃ発言するインターン生がいて、「ZZZ法律事務所では、こういう人を求めてないだろう。こうはなりたくない」「我が強すぎてもよくない」と学んだ。
・ ZZZ法律事務所は、同じグループのチームメイトもオファーをもらっていた。必ずしもチームからひとりを選抜しているわけではない。
・ WWW法律事務所のサマーでのグループディスカッションでは、4:4のディベートでグループ内で一番発言をしたら、その後に「ケア飯」に誘われた。しかし、ウインターはそれほど発言できなかったところ、「ケア飯」には誘われなかった。
・ 評価がどうなっているかは、ブラックボックス。結果的に「ケア飯に誘われたら、評価がよかった」ということになり、「ケア飯に誘ってもらえなかったら、ダメだった」と理解する。
・ 自分は、ZZZ法律事務所で、司会役、ファシリテーターを務めたのが高評価につながったかもしれない。
・ ZZZ法律事務所のグループディスカッションは、ひとりのパートナーが担当しているインターン生ばかりを5名集めて実施された。2日間で、2回実施した。チーム5名のうち、内定者が3名いた。
・ WWW法律事務所では、担当の先生から、後で「予備試験の成績も重要だが、模擬交渉での発言や立ち回りを見ている」と教えられた。
・ グループディスカッションは、周りのインターン生が慣れていないと、前年度にも参加していた自分は楽だった。前年度に勉強したのと同じような話が出た。割と、どこの事務所でも似たようなテーマを扱う。
・ レベルが高ければ、わりと細かい話まで踏み込むことになるが、初めての参加者は、事業譲渡と株式譲渡の違いから話を始めることになる。
・ ZZZ法律事務所も、一応、模擬会議をやったが、どちらかといえば、発言内容よりも、積極性とか協調性を見られていたような気がする。
・ 会議で「俺が!俺が!」というタイプの人は少ないが、ある程度、「ちゃんとしないと」という空気感がある。
・ ZZZ法律事務所のウインターでは、模擬会議をやった。内部会議の模擬。他のインターン生の意見が違っていても、それを頭ごなしに否定しないかどうか、みたいなところを見られているような気がした。「場の協調性」を重視しているような気がした。
・ 学部4年で初めてサマーに参加したときは、初学者だったので、知識面で苦しかった。会社法だけでなく、事務所によっては、独禁法の知識も問われたが、自分は労働法選択なので、厳しいところがあった。参加者の中で「自分が知識面で劣っている」と感じさせられた。
・ グループワークの対策をする時間があったら、予備試験の勉強をしっかりして、合格順位を上げる方を優先すべきである。

<個別の課題_ライティングアサインメント>
・ パートナー弁護士からの書面課題を重視している事務所としていない事務所がある。
・ WWW法律事務所は、書面課題を非常に重視していると感じたが、それ以外は、重視していない印象を受けた。
・ WWW法律事務所の課題は、「クライアントからこういう依頼が来ました。あなたはどう答えますか?」という問題が出されて、会議室のパソコンを使って制限時間内に提出する方式だった。
・ XXX法律事務所、YYY法律事務所、ZZZ法律事務所は、インターン生ひとりに対してひとつずつのマイデスクが与えられた。その自席で「クライアントからこういう質問が来ました」という課題に取り組んだが、「適当にやっておいていいよ」という感じだった。
・ XXX法律事務所でも、一応、課題が出されるが、課題をしている時間はあまりない。
・ XXX法律事務所から内定を得た際に、「課題がすごく良かった」「わからない問題にも粘り強く取組む姿勢が見えた」との評価を得た。
・ XXX法律事務所のライティングアサインメントが課された。1日目の昼に課された。担当パートナーの専門分野から出題されているので、配属されるグループ毎に異なる問題が出題されているのだろう。ひとりで考えてワードで起案した。
・ XXX法律事務所では、担当パートナーから提出した課題へのコメントをもらった。
・ ライティングアサインメントでは、「結論から書いた」ことを褒められた。これは、丁度、ひとつ前に参加した外資系法律事務所のインターンで指摘されたことだったので、複数のインターンに参加する意味があった。
・ WWW法律事務所は、「これをやってワードで起案して期限内に提出してください」という課題が出される。その間に、模擬交渉もあるので、忙しい。
・ ZZZ法律事務所は、課題はない。空いた時間に、担当アソシエイト弁護士が取り組んでいる案件の資料を見させてもらって「ちょっと考えてみて」と言われることがあるが、強制ではない。
・ YYY法律事務所は、一応、課題が出されて問題用紙が渡されるが、「暇つぶしだよ」と言われた。空き時間に「手持ち無沙汰」にならないようにやるべきことを提供してくれた。一応、「答え合わせ」のパートナー弁護士とのディスカッションの時間が設けられていたが、考え方を話すだけの軽いものだった。正式に書面で提出するわけではない。
・ WWW法律事務所は、書面を提出するので、提出した課題を採点されていると思う。
・ YYY法律事務所は、記憶の限り、サマークラークで個別の課題はしていない。
・ YYY法律事務所では、課題を出されているインターン生もいたが、自分の担当のパートナーは忙しすぎて課題を出してもらえなかった。その後に「ケア飯」に呼んでもらえたのだが、何で評価されているのかわからなかった。一番自信がなかった。他には手厚く対応されているインターン生もいたので、放置されたことで事務所に対する印象が悪化した。

<インターン中の会食>
・ 初日の夜と、2日目の夜にどちらも会食が開催された。お酒も飲む。
・ ZZZ法律事務所は、初日はアソシエイト弁護士と一緒で、2日目は、パートナー弁護士と、そのパートナーが担当するインターン生を集めたグループでの会食だった。
・ WWW法律事務所は、初日は、パートナー弁護士数人と、インターン生2人での食事。自分と組んだインターン生は、グループディスカッションでは違うグループの人だった。
・ XXX法律事務所は、初日夜が大規模な会食で、2日目夜も大規模な会食だった。2日目夜には、次の日が休日だったので、3次会まで開催された。
・ XXX法律事務所は、初日夜の1次会は、アソシエイト弁護士と担当するインターン生との小規模な食事会で、2次会は広めの場所での全体の会食だった。3次会は希望者のみだった。
・ 自分は、XXX法律事務所の3次会まで参加したが、結論としては、別に3次会まで行かなくてもいいと思った。3次会の参加者は10名程度で、半分以上は2次会で帰宅していた。3次会は、パートナー弁護士もいるので「審査されている」と思うと緊張してしまうので、行かなくてもよいと思った。
・ YYY法律事務所は、2日目夜は、パートナー弁護士とインターン生という組が、4組集まった合計8名の会食だった。
・ XXX法律事務所では、1日目の夜の一次会はグループでのディナー(弁護士3名:インターン生2名)だった。二次会は全体での飲み会だった。

<内定者の決定プロセス>
・ ウインタークラーク2日間で、インターン生の審査は終わっていると思われる。
・ インターンに参加した後で、内定をもらえるのは、コミュニケーション力があるインターン生だけ。コミュニケーション力に難があるインターン生は、インターンに参加しても、内定を得られていない。インターンでは、コミュニケーション力を見られている。
・ 企業への就活をしていないインターン生は、質問タイムに「本当に自分が知りたいこと」を聞く。しかし、採用側は質問を通して「こういう質問をするインターン生なんだ」と評価されている。民間企業への就活経験がないロー生は素朴なので、「質問タイム」を文字通り質問タイムとして受け取っていることが多い。
・ 採用担当パートナーからは、多くのインターン生が「事務所は自分に何を与えてくれますか」という視点の質問が多いのに対して、自分は「事務所にこういう貢献をできます」という発言をしていたことが好印象だった、と言ってもらえた。
・ YYY法律事務所は、担当パートナーの主観が基準だと思う。インターン生と会った中での態度とか人当たりを見ていると思う。
・ グループディスカッションの出来不出来というよりも、担当となるパートナーの先生との相性が大きいと思う。

<「ケア飯」>
・ ZZZ法律事務所のサマーの後の「ケア飯」は、パートナーの先生とインターン生は自分ひとりだった。他の「ケア飯」では、学生3人がまとめて呼ばれたケースもあった。
・ ZZZ法律事務所の「ケア飯」の直前に、予備試験の論文試験の発表があり、「今年は落ちた」という報告をした。
・ サマー後も、YYY法律事務所から「ケア飯」に誘われた。サマークラーク後に、ZZZ法律事務所から「ケア飯」に誘われた。WWW法律事務所も、サマーの後に「ケア飯」をしていた。XXX法律事務所だけが、サマークラークの後に「ケア飯」をしていなかったと思う。
・ WWW法律事務所、XXX法律事務所、ZZZ法律事務所の3つのウインターに参加したら、3つとも「ケア飯」に誘ってもらえた。
・ 「ケア飯」に来ていなくとも、本選考に出して通っている人がいた。ZZZ法律事務所にもいた。
・ XXX法律事務所は、周りの話では、「ケア飯」を今年もしていたらしい。司法試験直後の7月に連絡が来た友人もいる。ウインタークラーク後にケア飯にいった人もいた。
・ どこの事務所も、なんとなく、「ケア飯」は4月までに抑えるつもり、とおっしゃっていた。
・ 「ケア飯」にはウインターに参加した4つの事務所すべてから呼ばれた。時期はそれぞれバラバラだった。

第2フェーズ:大手事務所による高順位候補者への勧誘プロセス

<ウインタークラーク終了時のコミュニケーションの位置付け>
・ ウインタークラークの2日目の食事で「このあとも連絡すると思います」と言われることがある。
・ また、ウインタークラーク後に担当の弁護士に御礼メールを送ると、それへの返信で「今後、また4月頃に連絡すると思います」という「匂わせ」がなされることが多い。
・ ウインタークラークの後の面接と会食は、一方的に勧誘を受けるだけである。インターン生が自分の聞きたいことを聞く場が設定されるだけであり、インターン生が審査されるような場はない。事務所側では自分に内定を出してくれることが決まっている。
・ ウインタークラークの後の面接と会食は、内定を得ている就活生側の疑問を解消する場だと感じた。

<協定(8月1日解禁)の遵守状況に関するコメント>
・ 内定自体は、YYY法律事務所とZZZ法律事務所はかなり早く出していた。
・ ZZZ法律事務所は、ウインターの1日目に内々定をもらい、4月下旬に内定をもらった。
・ YYY法律事務所は、5月の中旬に、ウインターの担当パートナーと担当アソシエイトとの「ケア飯」があり、その時に内定をもらえたと理解した。ストレートにはそう表現しないが、来て欲しい、という口頭での勧誘を受けた。
・ 自分は、WWW法律事務所からは、3月下旬の段階で内定をもらった。「8月1日はもう形骸化しているから」との説明を受けた。
・ 本来ならば、8月1日に電話がかかってきて、個別訪問の日程調整が入って、面談と食事をした上で、8月中旬に決める、というのが本来の姿だった。今年も形式的にはそれは変わらずに(実質的に決めた後で)それを形式的に追完していた。
・ XXX法律事務所は、ウインタークラークの後に連絡がなくて、8月1日の公式解禁日後になってから電話が来た。当然、その頃にはもう決めているので検討対象にならなかった。
・ XXX法律事務所は、司法試験の少し前に電話があり、「司法試験が終わったら、食事に行きましょう」と提案された。そして、司法試験後の食事の際に内定をもらえた。その食事は、ウインターの時の担当パートナーとは別のパートナーだったので「統一感がない」と持った。とはいえ、ウインターの時に一度はお会いしたことがあるパートナーの先生だった。ウインターの時に30分程度の面談を受けたので、採用の総括のパートナーだったのかもしれない。
・ WWW法律事務所からは、8月2日に「不動産に興味がありますか?」というメールが来た。
・ 私は、まだ「8月1日解禁日」は残っている感じがした。全大手から「解禁日は8月」と言われた。周りに聞くと「全然関係なかった」と語る友人もいるが。
・ XXX法律事務所も、今年は解禁日を守っておらず、司法試験の1週間前に電話があり、「司法試験後のご飯の約束」をさせられた。「え?司法試験の1週間前に電話してくるの?すごいな」と驚かされた。
・ XXX法律事務所からは、「内定を出したいと思っているが、協定で8月1日よりも前には出せない」と言われていたが、結局、7月に「今、決めてほしい」と言われた。あれ?いつの間に協定がなくなったんだろう、と不思議に思った。
・ 協定なんて、どうせ守らないんだから、やめてしまえばいいと思う。
・ WWW法律事務所から「司法試験後の7月中に食事に行くのと、8月1日の後に食事に行くのと、どちらがいいか?」という質問を受けた。志望度を聞かれていると感じた。「8月1日の後で」と回答すれば、志望度が低いことを示すことになる。
・ 以前は、8月1日が解禁日だったが、徐々に破られるようになったと聞いている。最初に、WWW法律事務所が破り、YYY法律事務所が追随して、ZZZ法律事務所もついてきた、と聞いた。
・ 今年も、XXX法律事務所は、ずっと待っていたが、7月の上旬になって、ようやく他の事務所が早めから動いていることに気付いて、事務所内で検討があったようだ。「司法試験前に受験生を引っ張り回していいのか」という議論もあったが、「背に腹は変えられない」とのことで、7月上旬には「司法試験が終わったら食事に行かないか」という勧誘の電話連絡が始まった。

<法律事務所からの勧誘方法_総論>
・ 勧誘は、「事務所の弁護士との面談」と「食事」の2種類。
・ 事前に「どういう弁護士から話を聞きたいか」というメールでのアンケートがある。それにどう回答するかは就活生次第である。
・ 就活生によっては、「どういう弁護士から話を聞きたいか」という質問に対して「もう大丈夫です」と回答する人もいる。
・ 概ね、初回の事務所訪問の食事の際に内定を言い渡される。「こちらは来てほしいと思っているが、どう思っているか?」と尋ねられる。それをのらりくらりと交わして回答を引き延ばす。

<内定の勧誘・受諾のコミュニケーション方法>
・ 会食の場での内定で、その場では即答していない。一度、持ち帰って、8月に入ってから、電話で内定受諾の回答をした。
・ YYY法律事務所で採用担当パートナーに付いているアソシエイトの弁護士に対して電話連絡をして内定を辞退する連絡をした。担当パートナーには後日、メールで辞退を伝えた。
・ XXX法律事務所には電話でオファーを辞退した。YYY法律事務所とZZZ法律事務所には、メールでやりとりをした。
・ どこの法律事務所も、司法試験前は、激励のハガキやメールを送ってくれる。電話もあった。
・ 内定は口頭であり、書面は渡されない。
・ XXX法律事務所の食事の席でのオファーに対して「一旦、考えたい」と述べたら、1週間後に2度目の会食が設定されて、そこで内定を受諾した。

<ウインター〜司法試験までの採用活動>
・ 早期に事務所の側から「ぜひ」と勧誘してくれたのはありがたかった。まだどこに行けるかまったくわからない段階でプッシュしてくれると「希望の光」が見えて好印象だった。
・ ZZZ法律事務所が、一番早く内定を出していたと思う。ウインタークラークの2日目の食事に行く前に、内々定をもらった。そして、インターンが終わった日のうちにメールが届いて、翌日には「ケア飯」の日程が決まった。
・ 予備試験を受けていないサマークラーク組でも、優秀な就活生は、ZZZ法律事務所から、10月〜11月頃に内々定を出した後に、翌年5月〜6月に、再度、食事に行って内定を出している。
・ ZZZ法律事務所は、「ケア飯」に2回行った。ウインターが終わってすぐと、4月の2回。そこで「内定」とまでは言われていないが、「来てくださいね」とは言われた。そして、自分から依頼して、7月に司法試験が終わった後に2回目の食事を設定してもらって、再び「来てくださいね」と言ってもらえた。
・ サマーの後の「ケア飯」では、WWW法律事務所とYYY法律事務所からは、はっきりとした内定はなかった。他方、ZZZ法律事務所は、「内定を受諾するならば、内定を出す」という形で「オワハラ」をしてきた。
・ さすがに3月末の段階で内定を受諾する就活生はいない。回答を留保することは認められている。
・ WWW法律事務所と、ZZZ法律事務所は、4月の段階ですでに「ケア飯」が決まっていた。
・ ZZZ法律事務所からの最初のオファーは(予備試験前の)4月だった。食事に行って、オファーをもらった。いわゆる「オワハラ」を受けて、「うちに決めて就活を終わらせてくれるならば、オファーを出す」と言われて、「はい」と回答させられた。「ここでイエスと答えなければ、『早期内定組』からは外れる」と脅された。事務所内で合意されているわけではなく、担当パートナーによってやり方は異なるようだ。おそらく、担当パートナー毎に内定者確保のノルマがあるのだろう。
・ ZZZ法律事務所からは、4月に、弁護士3人と自分の4人で飲みに行った時に、内定を得た。その時は、まだ他の事務所を回る前だったので、「ちょっと待ってください」と保留した。
・ YYY法律事務所からは、5月上旬にオファーを出していただいて、「司法試験が終わるくらいまで考えていいよ」と言われた。そして、7月下旬にもう一度、担当パートナーと会って、事務所に伺って、その後に会食があり、会食の場でオファーを受諾した。
・ YYY法律事務所からは、5月の中旬に食事の連絡があった。
・ WWW法律事務所、XXX法律事務所とも食事に行った後で、ZZZ法律事務所に、5月下旬の段階で内定を受諾した。受諾した後に、YYY法律事務所から電話がかかってきて、「本当にそれでいいの?とりあえず食事だけでも」という勧誘を受けた。
・ 司法試験を受ける前の5月頃に、WWW法律事務所の内定を受諾した。もっと前からオファーをしてくれていて、自分が回答を引き延ばしていた。5月に食事に連れて行ってもらった際に受諾した。
・ WWW法律事務所からは、5月又は6月に、食事の連絡が来た。
・ XXX法律事務所は、サマークラークでは、「ケア飯」をしていなかったと思う。ウインタークラークの時にも「食事はやらない方針」と聞かされていたが、6月の末に急に電話がかかってきて、「来週どうですか?」という連絡があった。
・ XXX法律事務所から、司法試験前に呼ばれた、と友人が言っていた。
・ YYY法律事務所の「ケア飯」は遅かった。司法試験の1ヶ月位前(6月位)に、一度、食事に連れて行ってもらった。そして、7月に司法試験が終わった後に、二度目の食事に連れて行ってもらった。
・ 自分は、司法試験前に雑念を払うため(試験に関係がないことを排除するため)にも、就職先を決めるつもりだった。

<司法試験後の合意に向けた採用活動>
・ 司法試験が終わってからの7月末までの期間に、XXX法律事務所と、YYY法律事務所からそれぞれ食事に行った。
・ XXX法律事務所からは、ウインタークラーク参加後に音沙汰がなかったが、6月下旬に、担当してくれた弁護士からいきなり電話がかかってきて、「司法試験がんばってください」「司法試験が終わったら7月中に食事に行きましょう」という連絡があった。そして、司法試験が終わった後に電話が来て、食事の日程調整をした。直接にお店に集合して、ウインターで自分を担当してくれたパートナー弁護士と、再法適用硫黄担当パートナー弁護士と、アレンジを担当するアソシエイト弁護士の3人との3:1の食事があり、食事の席で「ぜひどうですか?」「オファーを出します」と言ってもらえた。
・ XXX法律事務所からは、7月20日前後に内定をいただいて、7月下旬に受諾した。
・ 自分は、7月下旬に内定を受諾した。

就活生が内定の受諾先を決定するために悩んだ過程で考慮した法律事務所に対する印象について、以下、事務所別にそのコメントを整理してみました。

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