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【「弁護士の就職と転職」note】就活生との対話:ファーストキャリア選択(大手法律事務所のうちどこがよいか?③)

就活生
「パートナーになりにくい事務所と、なりやすい事務所があるのですか?」

西田
「新規のパートナー就任については、各事務所が年始に公表しているよね?」

就活生
「はい、各事務所のウェブサイトによれば、2023年1月に、NAで、17名の弁護士(日本法)が新規パートナーになりMHMで、17名の弁護士(日本法)が新規パートナーとなりAMTでは、10名の弁護士が新規パートナーになっていてNO&Tでは、7名の弁護士(日本法)が新規パートナーになっています。これだけみると、NO&Tが一番、パートナーになるのが難しそうです。」

西田
「でも、今は、パートナー身分を階層化しているから、ジュニア・パートナーにはなりやすくても、その次に、シニア・パートナーに昇格するための競争が激しい、ということもあるよね。」

就活生
「以前、中村直人先生の『弁護士になった「その先」のこと。』を読んだのですが、ジュニア・パートナーとシニア・パートナーの違いは見当たりませんでした。」

西田
「中村直人先生がどこの事務所のご出身か知っている?」

就活生
「森綜合ですよね。あ、そうか、それで先ほど、MHMで『ノン・エクイティ・パートナーの制度が創設された』という話をされていたのですね。」

西田
「『弁護士になった「その先」のこと。』には、『受任30%、実働70%』のところで、『なんで30%なんだろう、っていうのが僕も分からなくてですね、昔森綜合にいたときに聞いたことがあるんだけども、なんのことはない、たいした理由はないそうで。』と書かれていたね。」

就活生
「受任30%というのは、高いのですか?」

西田
「事務所が大規模化して組織も成熟化していったら、受任に割り当てる比率を下げて実働の比率を引き上げるような働きかけが強くなると思うよ。」

就活生
「なぜですか?」

西田
「受任に割り当てる比率が高い、ということは、先輩パートナーが請け負った既存クライアントの仕事をするよりも、自分で新規のクライアントを開拓する方が得だから、新規開拓へのインセンティブが高まるよね。」

就活生
「それは理解できます。」

西田
「でも、優秀なパートナーがみんな新規開拓ばかりに自分の時間を使うようになってしまって、既存クライアントへのサービスの質が低下してしまうのも困るよね。」

就活生
「それはそうですね。」

西田
「実際、『誰のおかげで受任できたか?』という判断も難しいし。」

就活生
「それはどういう意味ですか?」

西田
「大企業の場合は、特にいくつもの事務所を使い分けている。単に『20年前に当該クライアントから最初の相談を受けて受任経路ができた』というだけで、重要な案件を依頼してくれるわけではない。重要な案件ほど、大企業は、複数の事務所を見比べて最適な依頼先を選択するから、当該案件に関する専門性が高い弁護士がいること、類似案件を手がけた経験が豊富なことの重要性が高まってくる。」

就活生
「営業は奥深いですね。」

西田
「シニアなパートナーが、クライアントからの依頼の電話を受けるだけで、あとの仕事を後輩パートナーに丸投げするだけで誰よりも多くの収入を得ていたら、深夜まで汗水たらして実働しているパートナーに不満が溜まってしまうしね(苦笑)」

就活生
「ジュニア・パートナーのうちに営業力を鍛えていくことになるのですね。」

西田
「ジュニア・パートナーに対する報酬をどう設計するかにも関わる問題だね。」

就活生
「どんな方法があるのですか?」

西田
「方針の違いとして大きいのは、『報酬を本人の売上げに連動させるかどうか?』だね。」

就活生
「売上げに連動させる報酬体系のほうが、営業に熱心になる、ということですね?」

西田
「実際にはそうでもないんだよね。というのも、本人がもっとも効率よく自分の稼働部分に基づく売上げを立てる方法は、先輩パートナーから引き続き案件を下請けすることだから、そうなってしまうと新規開拓が疎かになってしまう。」

就活生
「歩合給アソシエイトの延長線みたいな感じですね。」

西田
「そう思う。ただ、それだと、アソシエイトの仕事をパートナー名義で続けているに過ぎないから、事務所全体の売上げのパイを大きく広げていくことにはつながらない。実際、歩合給的な報酬体系の下では『パートナーに昇格した途端に、先輩パートナーが自分に案件を振ってくれなくなり、売上げが立たなくなってしまった。』として、パートナーになってからインハウスに転職せざるを得なくなってしまうシナリオもある。」

就活生
「それとは異なる報酬体系もあるのですか?」

西田
「本人の売上げを考慮する度合いを下げて、事務所全体の収益をベースにジュニア・パートナーの配分を決定する方法もありうる。」

就活生
「その方が、ジュニア・パートナーの報酬は安定しそうですね。」

西田
「確かに、当該年度の売上げには直結しない先行投資的な活動にも自分の時間を使いやすくなるよね。」

就活生
「それでもいずれは自分の売上げを立てることが求められるようになるのですね。シニア・パートナーになると、また報酬体系が異なってくるのですか?西田先生の本(「新・弁護士の就職と転職」)には、「業界研究」の「外資系事務所と日系事務所」の比較のところで、「一般に、米国系は「Eat What You Kill」と呼ばれる方式で、各パートナーの収入は、その年における同人の売上げに連動していると言われる。他方、英国系は、Lockstepと呼ばれる年功序列型であり、パートナーとしての経験年数が長くなるほど分配額が増えると言われる」と述べられていましたが、どちらが得なのですか?」

西田
「強力な営業力があって、自分の売上げに自信があるパートナーにとってみれば、それは米国系の「Eat What You Kill」型のほうが報酬の上振れへの期待は大きいと思うよ。」

就活生
「日本の大手でいうと、どこがそれに当たりますか?」

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