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「インハウス弁護士の役割は『複数の外部事務所から相見積もりを取ってリーガルフィーを引き下げて予算を節約すること』にあるわけではなく、優秀な外部弁護士との間で『いざという時』には無理を聞いてもらえるような友好な関係を維持することにある」と考えさせられた話

経営法友会で「インハウスロイヤーのキャリアプラン」というインタビュー企画を担当させてもらった。


会報(2022年11月号)には、その感想文を掲載させてもらったが、インタビューを通じて、ひとつ、強く印象に残ったコメントを会報には載せなかった。それは、野尻裕明弁護士(日本たばこ産業/JT)へのインタビューで聞かれた、次の言葉である。

外部の法律事務所に無理なお願いばかりを続けてはいけない。外部の法律事務所から大事に思ってもらえる会社でなければならない。

外部の法律事務所は、『ただお金さえ払えば、常にベストのサービスを提供してくれる』わけではない。

野尻弁護士のコメントを、私の理解した言葉で説明させていただくと、
・ 社内弁護士自身も『これは無理なお願いだなぁ』と感じながらも、外部事務所にその「無理なお願い」をしなければならない時が来る。きわめて納期の短い仕事だったり、法律的見解に留まらない意見を求めなければならないこともある。
・ そういう『無理なお願い』をした時でも、今の顧問弁護士からは、ものすごく親切かつ丁寧に対応してくれる関係性が今は構築できている。
・ その良好な関係を維持するためにも、平時で、特に急ぐ必要がない時には、外部の法律事務所に不必要な負担を強いることがないように、長めの納期を設定したりするようにしている。
という内容だった。

私は、最近、外資系法律事務所との間で情報交換をして回る機会があったが、その際に、そのコメントと対をなすような外部事務所側の問題意識を確認することになった。

私は、「外資系法律事務所にとっては、巨大プロジェクトをいくつも抱えている総合商社のような企業が理想的なクライアントであろう」という先入観を抱いていたが、外資系法律事務所のパートナー層から聞かれたのは、

大規模なプロジェクトにおけるリーガルカウンセルの選定だからといって、いつもいつもプレゼンテーションをさせられて見積書を作らさせられて、リーガルフィーを下げるための当て馬として扱われていたらモチベーションが下がる。

逆に、長期的に信頼関係を維持して仕事をさせていただける事業会社には、その期待に応えられるようにいい仕事をしたいと思う。

というコメントだった。

クライアント企業としては、外注先である法律事務所への支払額に無駄があってはいけない。それは当然だが「リーガルフィーを削減しようとして、提供されるリーガルサービスの質を落としてしまう」という事態を招いてしまったら元も子もない。

外部の法律事務所に所属するパートナーもアソシエイトも人間である。プロであっても(プロであるが故に)仕事へのモチベーションはサービスのスピードにもクオリティにも影響を及ぼしてしまう。インハウスロイヤーは、社内で、最も外部弁護士の気持ちを理解できる立場にある会社員である。そうだとすれば、「リーガルフィーを(適正な金額幅を超えて)極限までできる限り下げる」ことに注力するよりも、「外部の法律事務所から、質の高いリーガルサービスの提供を受けためには何が必要か?」という問題意識を持つべきなのだろう。

そうすれば、自然と、野尻弁護士のように「当社が無理なお願いをしなければならない場面においても、外部の顧問弁護士が、モチベーションを損なうことなく、当社のためにベストを尽くしてくれるような良好な関係構築」を維持する方向での工夫に頭を巡らせることになるのだろう。

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