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最高裁判事のジョブ・ディスクリプションってどうなってるんだろう?

6月4日の閣議で、7月に退任される最高裁判事2名の後任の人事が決まった、との報道がなされた。報道によれば、裁判官枠では大阪高裁長官の安浪亮介裁判官が、弁護士枠には、長島・大野・常松法律事務所パートナーの渡辺恵理子弁護士が任命することが決まったとのことである。

3年半前、宮崎裕子弁護士(当時)が、最高裁判事に任命されるとの閣議決定がなされたニュースに対しては、「最高裁判事の人事は、政治力ではなく、本当に、法律家としての才能やセンスを重視して行われているんだ!」と、良い意味で驚かされた(税務訴訟で国税側を散々に苦しめた敏腕弁護士が選ばれる、という意味でも)。

ただ、続いて、2年半前には、西村あさひ法律事務所からM&Aの専門家である草野耕一弁護士(当時)が選ばれて、そして、今回、宮崎裕子判事の後任の弁護士枠に、同じく長島・大野・常松法律事務所から、競争法の専門家である渡辺恵理子弁護士が選ばれる、という報道に接して、今度は、逆に、「最高裁判事の弁護士枠の人事って、どういうジョブ・ディスクリプションで、どういうバックグラウンドチェックをして行われているのだろう?」という方向に疑問が湧いてきた。

一般に、弁護士の「優秀さ」は、アソシエイト時代には、所内で、その「スキル」が人事評価の対象になるが、パートナーになって以降は、その「スキル」が問われる機会はなくなる(弁護過誤が問題視されるような事態でも生じない限りは)。毎年の成績は、売上ベースで測られるようになる。

また、バックグラウンドチェックをやろうとしても、利害対立が深刻な紛争案件の代理を主とする弁護士を対象とする場合には、対立当事者側に照会すれば、やり込まれた相手ほど、悪印象を抱いている可能性がある。照会対象のパートナーに仕えていたアソシエイトを情報源にすれば、短時間で高いクオリティのアウトプットを出すために、こき使われた部下からは、パワハラ等の指摘が来るかもしれない。

そういう意味では、専門分野がはっきりしている弁護士候補者については、同分野を専門とする弁護士からの評判を確認することになるのだろうか。

いずれにせよ、「最高裁判事としての適性があるかどうか?」という段になってから、バックグラウンドチェックしても、もはや、正しい結果を得ることは難しいような気もする。というのも、所属事務所からすれば、「最高裁判事を輩出すること」は名誉なことであるから、仮にネガティブな事情が存在していたとしても、それを敢えてフィードバックすることのメリットを感じないだろう(逆に、「定年後の処遇をどうしようか」と迷っているような場合には、美しいEXITの道が拓けることを意味する)。ネガティブ情報を出すことにインセンティブを持つ者がいるとすれば、最高裁判事ポジションを狙う競合する候補者側、ということになろうか。

そう考えてみると、やはり、相当に早い段階から、候補者として名前が挙げられる人物の人柄や能力の調査を進めておく必要があるのだろうな、と想像する。

っと、「最高裁判事ポストはきわめて重要なポストなので、人柄面でも能力面でも最高の候補者を選ぶべきである」という推測の下に想像を膨らませてみたが、実際のところ、優秀なスタッフが周りを固めて、合議で事件を審議するならば、判事自身の人選に多少のミスマッチがあっても、それをフォローする自信が裁判所側にあるのかもしれない。そうだとすれば、大企業が社外取締役に誰を選ぶか?という議論(偏った自説を強硬に主張する人だけは避けたい)と重なる部分もあるのかなぁ。

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