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法律事務所の就活では「リーダーシップ」よりも「メンタルの強さ」をアピールする方が良いと思う理由

2012年に発売された「採用基準」という本は、当時、ベストセラーになり、私もそのタイトルに惹かれて買った。読んでみると、マッキンゼーの採用マネージャーを12年務めた伊賀泰代さんが、そのご経験に基づいて「リーダーシップこそコンサルタントにとって最も重要なスキルです」と語られているのはとても説得力があり、「良い本だな〜」と思った。

ただ、「これが法律事務所の就活に当てはまるか?」と言えば、「法律事務所はそこを見てないかな〜」とも思った。だから、自分の本でも「企業法務系事務所の新人弁護士の採用選考において、リーダーシップをアピールしても無駄である」と書いた(「新・弁護士の就職と転職―キャリアガイダンス72講」68頁)。

自著の記述の繰り返しになるけど、別に、
― 弁護士業務においてリーダーシップが必要ない
と言っているわけではない。それよりも、
― 法律事務所のパートナーにとっては、超重要な素養である、
と思っている。ただ、
― ジュニア・アソシエイトに求められるものか?
と言えば、そうではないかな〜と思っている。それどころか、
― ジュニア・アソシエイトが『リーダーシップ』を発揮して独断で案件をまとめようとするのは、リスクが高いと思っちゃうかも、
と危惧してしまう。

こういうことを言っていると、
「リーダーシップをアピールしても意味ないならば、だったら、何をアピールすればいいのか?」
という質問も受ける。ぶっちゃけ(学業成績以外で)最もアピールになるのは、
「自分はメンタルが強い」
という点だと思う。

どれだけ成績が良いアソシエイトであっても、「ちょっとキツく指導したら、体調を崩してしまってオフィスに出て来られなくなってしまう」というのは、パートナーとして本当に困る。

もちろん、最近では、パートナー側も、できる限り、配慮をするようになっているようだが、それでも、急ぎの仕事も多い中で、イライラすることもあるし、アソシエイトの起案や対応の杜撰さに「え?あれだけ時間があって、これだけのものしかできていないの!」と素朴に驚いてしまうことはある。

「自分にはリーダーシップがある」と自慢するような意識高い系の若者に対しては、
― あれ、こいつ、もしかしたら、自分の意にそぐわない仕事をさせられたら、ふてくされてしまうかも、
という懸念が頭をよぎることもある。

他方、
「学生時代は体育会系サークルに所属して毎日ハードなトレーニングを積んでいました」
とか
「文化系ですが、〜〜〜という成果を残しました」
と言ってもらえると、
「不本意な仕事でも、投げ出したりせずに、食らいついて来てくれるかも」
という期待を抱かせてもらえる。

法律事務所では、アソシエイトに対して、最初から、派手でカッコ良い仕事が与えられるわけではない。地味なリサーチや事実関係の整理から始めることが必須である。逆に言えば、きっちとしたリサーチや分析を根気よく続けられたならば、そのようなアソシエイトが役に立てる仕事はいくらでも存在する。

なので、成績が平凡で、履歴書に光る材料がない就活生が、唯一、成績優秀層を逆転する材料があるとすれば、
― メンタルの強さ
にあるんじゃないかなぁ、と思っている。


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