大手法律事務所内定者との対話:パートナー昇進数 19 西田 章.. 2024年1月7日 13:00 内定者「あけましておめでとうございます。昨年12月に大手法律事務所の新人弁護士の入所のお知らせが出ていますが、どう思いましたか?」西田「AMTの62人が最も多くて、NO&Tの44人が少ない、ということだよね。でも、76期の入所人数は、2022年6月時点の採用活動の内定者数から、裁判官、検察官に流れた後の数、というだけだから、特に注目していないかな。むしろ、今月のパートナー昇進数の方が興味深かったね。」内定者「76期の採用人数が一番多いAMTは、パートナー昇進数は一番少なくて5人なのですね。」西田「パートナー昇進数は、2023年の秋以降に決定されたものだから、直近の動向を探るにはより参考になると思ってる。」内定者「パートナー就任数が多いNAとMHMは安泰、という感じですね。」西田「だからといって、パートナー昇進数が少ない先が危ない、ということにはならないけどね。事務所経営面においては、シニア・パートナー(エクイティ・パートナー/フルパートナー)をどれだけ増やすかという点の方が大きいけど、この数字は公表されないから。」内定者「パートナーには弁護士何年目くらいでなるべきものなのですか?」西田「新人パートナーを修習期別に整理してみると、最速でパートナーになっている67期は、2014年12月に弁護士登録をした世代だから、弁護士10年目にパートナー1年目となったことになる。やはり、企業法務の世界では『一人前になるために10年かかる』と思っておいたほうがいいだろうね。」内定者「やはり、なるべく早くパートナーになれた方がいいですよね?」西田「う〜ん、ぼくは必ずしもそうは思っていないんだよね。大手事務所の場合は、早期にパートナーに昇進するのは『アソシエイトとして優秀だった』という証明ではあるけど、『パートナーとして優秀か?』についてはまだ期待値に過ぎないと思う。」内定者「パートナーになった方が収入は増えますよね?」西田「報酬面のアップサイドを狙ってパートナーを目指すのは励みになると思うけど、報酬の算定式が変わるから、会社員のように『ポジションが上がれば収入が増える』という風に単純には言えないと思う。遅咲きでも、パートナーになってから自分が専門とする分野がブレイクすれば、生涯報酬で逆転することも全然ある。」内定者「10年目を目指しながらも、結果的に15年以上かかっても構わないのですね。」西田「うん。実際、パートナーになったら、売上げも気にしなければならないし、アドミニ関連の業務も増えるから、自分の専門分野をアップデートする余裕がなくなってくる。でも、キャリアプラン上、最悪なのは『短期的な売上げに追われてプレイヤーとしての自己研鑽を怠っている間に、後輩がパートナーに昇進して自分が専門とする分野に関して自分よりもクライアントから信頼されるようになってしまう。そしていつの間にか所内でも自分が必要とされなくなってしまう』というシナリオにあると思う。」内定者「専門分野を何に設定するかも重要ですね。20年以上かかっても大丈夫なのでしょうか?」西田「育児や介護などのプライベートな事情もあるから、ある程度の時間的な幅をもって考えるべきだけど、パートナーを目指すならば、実務経験20年くらいの間にはなっておいた方が望ましいだろうね。というのも、学生時代の同期で企業に就職した人たちも20年くらい経てば、社内で出世していることが多い。直接の知り合いでなくとも、クライアント企業内の幹部候補にとっても、おじいちゃん弁護士よりも、同世代の弁護士の方が気軽に相談しやすい、という面もある。(潜在的)クライアント企業内の同世代が外部専門家選びに発言権を持つようになった頃に、自分もパートナーとして案件を受任して裁量を持って案件を処理できるようになっておいた方が便宜だと思うよ。」 ダウンロード copy 19 この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか? サポート