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弁護士の就職と転職Q&A(対話形式編)「最近、転職エージェントからの売り込みが増えたけど、これは何?」

採用担当パートナー
「最近の弁護士の人材市場は、どう?」

西田
「ぼくは『コロナ禍で買い手市場に転じる』と予測していたのですが、見事に外れました。法律事務所も、企業も、いい人材の採用に、引き続き苦労をしています。最近の特色としては、コロナ禍でオンライン会議が定着した影響で、若手弁護士が気軽に転職エージェントを利用するようになりました。」

採用担当パートナー
「そういえば、最近、転職エージェントからの売り込みが増えたけど、これは何?」

西田
「オンライン会議に慣れた若手の弁護士は、転職エージェントに相談することに対する心理的抵抗を感じないみたいですね。直接に法律事務所に応募するのは心理的ハードルが高いので、『まずは、転職エージェントに相談してみよう』という感覚で。」

採用担当パートナー
「なら、西田さんも商売繁盛だね。」

西田
「う〜ん、どうかなぁ。コロナ禍になる前の方が、候補者との間の信頼関係は築きやすかったですね。今は、転職エージェントへの相談の敷居が低くなった分だけいくつもの業者に同時並行で相談する弁護士が増えているし。」

採用担当パートナー
「それは許されているの?」

西田
「候補者に『他の転職エージェントに相談するな』と要求することは、まずないですね。そもそも、候補者との間では何の契約も結ばずに、単に業者が一方的に守秘義務を負うだけですから。」

採用担当パートナー
「でも、いろんな転職エージェントに相談されたらアドバイスしにくいでしょ?」

西田
「複数ルートから助言を得ることで本人のキャリアの可能性が広がるならば、ぼくは全然構わないのですが、逆に本人が可哀想になったりします。」

採用担当パートナー
「可哀想?」

西田
「現実には、そんなに多くの法律事務所が転職エージェントを利用しているわけじゃないじゃないですか。アソシエイトを採用したら、人件費が増えるにもかかわらず、転職エージェントは採用したら『年収の30%』とかの成功報酬を一時金で請求してくるし。そのアソシエイトがまだ使えるかどうかも分からないうちに。そういう実態は隠して、転職エージェントが『うちはすべての法律事務所に紹介できる』みたいな顔をするのは不誠実だな、と思います。」

採用担当パートナー
「でも、転職エージェントが、候補者から第一志望と言われた事務所にツテがないときはどうするの?」

西田
「ぼくは、そういう場合は『自分にはツテがないので、直接に応募された方がいいと思いますよ。志望が固まっているのに、下手に転職エージェントを介在させてしまうと、事務所側にも紹介手数料の負担をかけてしまうので、採用のハードルが上がると思います。』と伝えてます。でも、転職エージェントの中には、サーチを依頼されてもいない事務所にいきなり『こんな候補者がいる』とレジュメを送り付ける業者もいるみたいですね。」

採用担当パートナー
「ひまわり求人に採用情報を載せたら、頼んでもいない転職エージェントからレジュメが送られて来たね。名前を伏字にしたレジュメが。」

西田
「自社にツテがないから相手にしてもらえなかった、と正直に告白すればいいのに、転職エージェントの中には、一方的に履歴書を送り付けた事務所から自社が無視されたのが実態でも、候補者に対しては『採用ニーズに合わなかった』とか虚偽の説明をしたりする業者もいるみたいですね。候補者が事務所と直接にコンタクトすることがないことに便乗して。それは酷いと思います。」

採用担当パートナー
「なんでそんな無理をするんだろう?」

西田
「転職エージェントは、成功報酬だけで生計を立てているので、『下手な鉄砲数打ちゃ当たる』の精神なのだと思います。最近は、候補者が複数の転職エージェントに相談しがちなので、そのことも『下手な鉄砲数打ちゃ当たる』を促進してますね。」

採用担当パートナー
「他の転職エージェントに先んじるために?」

西田
「候補者は、いくつもの転職エージェントに相談しても、応募する際には、当該事務所を最初に紹介してくれた業者に仲介を依頼することが多いからだと思います。」

採用担当パートナー
「それは、義務なの?」

西田
「いえ、義務ではありません。転職エージェントXから『●●法律事務所に応募しませんか?』と勧誘された時、『●●法律事務所』について、以前に転職エージェントYから提案を受けていた場合には、『●●法律事務所に応募するならば、最初に提案してくれた転職エージェントYに申し訳ない』という、うしろめたさが生じるんでしょうね。その心境を逆手に取った転職エージェントは、片っ端から候補になりそうな事務所を、自分にツテがないところも含めて、他の業者に先んじて絨毯爆撃的に潰していくんでしょうね。」

採用担当パートナー
「でも、見ず知らずのエージェントからレジュメが送られて来ても、面接に呼んであげられないよ?」

西田
「それが狙いなんでしょうね。転職エージェントとしたら、候補者の第一志望にツテがないと告白して、ツテがある別の業者に逃げられてしまったら、成功報酬を貰う機会を逃してしまいますから、自社で紹介できない先でも、ダメもとで自社でアプローチして、その可能性が潰れたら、次に自社にツテがある別の事務所を紹介できたら良い、という感覚なのでしょうね。」

採用担当パートナー
「それは酷いね。」

西田
「はい。候補者から『転職エージェントZに●●法律事務所への応募を依頼したら、書類選考で落とされた』という話を聞くと、『●●法律事務所だったら、ぼくが紹介したら面接には進めただろうに』と思うこともあります。」

採用担当パートナー
「そういえば、同じ候補者のレジュメが複数の転職エージェントから送られてくることもあるね。」

西田
「ではここでクイズです。仮に、複数の業者から同じ候補者を紹介されて、その人を採用した場合に、どちらが成功報酬をゲットできることになっていると思いますか?」

採用担当パートナー
「やっぱり、先に候補者のレジュメを送って来た方の業者かな?」

西田
「はい、それが業界の慣行と言われています。明文化されているわけではなく、法的拘束力もありませんが。」

採用担当パートナー
「債権の二重譲渡の対抗要件みたいだね。でも、確かに、本人の意思を無視して、転職エージェントが無理矢理進めて来る案件もある、と聞くね。他の事務所の採用担当パートナーから、『転職エージェントから本人が強く志望しているからと言って紹介されたから、面接に呼んでみたら、本人は、転職エージェントに勧められたから来ただけだった』と聞いたのを思い出した。」

西田
「そうですねぇ。転職エージェントの仕事は、候補者に対しては『事務所側がぜひあなたを採用したいと言っている』と勧誘して、事務所側に対しては『本人がぜひとも貴事務所で働きたいと言っている』と売り込む、ということを同時並行で進めて、結果、帳尻が合えばラッキー、みたいなところがあるかもしれませんね。」

採用担当パートナー
「それにしても、西田さんは、上品というか、上品過ぎるというか、全然、候補者を紹介してくれないよね。弁護士業務や社外役員もやっているから、人材紹介で稼ぐ必要がないのかもしれないけど、もっと幅広に紹介してくれたらいいのに。」

西田
「法律事務所の先生に無駄な手間をかけさせるのが心苦しいので、紹介するのは『採用に至るかどうかはさておき、会ってみてもらうだけの価値がある候補者』だけにしようと思ってると、なかなか。。。。」

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