弁護士の就職と転職/備忘録/「減点主義」と「加点主義」
ぼくは、大手事務所所属時代に、
― 経産省(経済産業省政策局)
と
― 日本銀行(金融市場局と決済機構局)
に二箇所続けて出向に行かせてもらいました。
この出向経験は、
ー もともとは同程度の能力の人も、減点主義的組織で働くか?加点主義的組織で働くか?で、仕事に対するスタンスが大きく変わっていく、
ことに気付かされました。
日本銀行では、まことしやかに、
― 入行時に新入行員はリストにおいて優秀な順番に並べられている。順位は下がることはあっても、上がることはない。
という、減点主義組織であるという話を耳にしました。
これに対して、経産省は、
― 規制緩和の推進を大義名分にした以上は、泳いでいないと死んでしまうマグロみたいなもので、何かしないと評価されない。
と言われていました。実際、ぼくがお仕えした横浜国大出身の上司は、その後、資源エネルギー庁長官にまで上り詰めていました。
その対比は、新聞記事への対応の違いに現れていました。
経産省の課長補佐たちは、自分が担当した政策が新聞に取り上げられると、「よしっ!」と気合を入れて、省内向けに記事解説を作成して、省内に自分の担当政策をアピールしていました。
これに対して、日本銀行では、「新聞に出る=バッドニュース」という発想で、そのニュースの沈静化に奔走しなければならないので、1日、何事もなく、終業時刻を迎えると、「あぁ、よかったら、今日も何もない平穏な1日で」と胸をなでおろすタイプの人たちでした。
法律事務所においては、
― 減点主義的タイプ=金融機関をクライアントにする弁護士に多い?
― 加点主義的タイプ=訴訟弁護士や倒産/事業再生に多い?
というイメージがあります。
金融機関は、元来、自らが(アップサイドを狙うよりも)手堅い「チャリンチャリン」と眠り口銭を稼ぐビジネスであるが故に、外部弁護士にも、その手堅さを確実にしてくれるミスのないタイプが望まれそうです。
他方、当事者が、訴訟や倒産という非常事態で動揺しているときに、次から次に聞かされるトラブル情報に対して、(一緒になってあたふたしてしまう肝っ玉のちっちゃい弁護士よりも)「え?今度はそんなことが起こっちゃったの?」と嬉々として、むしろテンションを上げて取り組んでくれる人のほうが頼りにされるからかなぁ。