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「予備合格したのに四大落ちました」さんへ

ご連絡先がわからなかったため、こちらで私の感想を述べさせていただきます。

まず、
「自分の何が悪かったのだろうか?」
という敗因の分析や自分の欠点を探すのはもう止めた方がいいと思います。

分析を進めても、
― 見当違いの分析結果を基に、次回の応募では、逆にあなたの良さが失われてしまう、
か、
― 結論が出ずに、ネガティブなオーラを引きずったまま、次の応募に臨むことになってしまう、
の、どちらかだと思います。

落ちたのは、シンプルに、
― あなたよりも『適任』と評価された志願者が内定予定数よりもたくさんいた、
というだけであり、
― 「四大落ちました」さんの言動に訂正すべき間違いがあった
とは限りません。なので、
― 『適任』と評価された
というのは、
― 現時点における採用担当者の主観的判断にすぎない、
と割り切ってしまうのが賢いと思います。

転職エージェント的には、こういう事態を
「ご縁がなかった」
と表現します。

このフレーズには、
「その事務所に行けば、良い成長の機会を得られたと思うだけに残念でした」
という意味で用いることもあるのですが、それだけではありません。逆に、
「その事務所に行っても、うまくいくシナリオは見えていたわけではないので、気持ちを切り換えて他に目を向けることができて、実はよかったかもしれませんね」
という思いを込めて、「ご縁がなかったですね」と言葉を添えることがあります。

私は、「四大落ちました」さんのご相談に対して、「実はよかったかもしれませんね」という意味で、「ご縁がなかったですね」という感想を伝えたいと思います。

四大が、就活において、目指すべき価値のある職場環境であることには同意します。例えば、M&Aロイヤー等のトランザクションを専門的に扱える弁護士になりたいと願うならば、四大には、大型案件に携われる機会が豊富にあるので、その意味では「残念でした」という感想が最初に浮かんだことは確かです。

しかし、「四大落ちました」さんが、これから、司法試験に合格して修習に行かれる、少し先のことを想像してみると、
「修習に行ってみたら、自分は訴訟代理人業務に向いていると感じられることもあるかも」
という気もしました。もし、訴訟弁護士としての腕を磨きたいならば、四大に行くことは必須ではありません。ご案内のとおり、大規模な事務所は、コンフリクトの制約があるため、むしろ、「ガチに訴訟代理人業務をするためには不向き」とすら言えると思います(M&Aロイヤーであれば、案件が終われば、すぐに相手方の代理をすることもありえますが、例えば、特許訴訟であれば、発明の中身にまで踏み込んだ分析をするため(その秘密は代理人の頭には残ってしまうので)、クライアント企業からしてみれば、「訴訟が終わったら、次の訴訟では相手方代理人弁護士も選択肢に入れる」というほど簡単に割り切れるものでもありません)。

また、仮に、「四大落ちました」さんが、修習を終えて、弁護士としての実務を始めた後でも、「やっぱり、四大事務所でM&Aをやりたい」などの希望を強く抱くならば、中途採用で再チャレンジする方法もあります。

一般に、四大の就活では、
「四大から外資系事務所に転職することはあっても、その逆はない」
という説明がなされることがあり、
「四大には、あとから行ける可能性がない」
と誤解されている人も多く見受けられます。

でも、現実には、四大でも、第二新卒的な採用に門戸が開かれています。

もちろん、新卒採用されたアソシエイト(生え抜き)に優秀な人材が多いため、中途採用の選考を突破して内定を獲得するためには、それら優秀な「生え抜き」と比較しても、遜色がないと評価してもらうことが必要となります。

ただ、「新卒採用」と「中途採用」は、採用基準が異なります。
「新卒採用」が、実務経験がない学生上がりを中心として「学業成績」主体で選考が進められるのに対して、「中途採用」は、法曹になってからのあなたの「実務経験」を中心として選考をしてもらうことができます。「学業成績」主体の選考で内定が出なかったとしても、これから積み上げていくことになる「実務経験」を中心とする選考では内定をもらえる可能性も生まれてきます。

「新卒採用」が、多数のエントリーシートを横並びにして順位付けをする「相対評価」であるのに対して、「中途採用」は、その人の話をじっくりと聞いてその人の弁護士としての力量を図る「絶対評価」の側面が強くなります(評価の対象となる「実務経験」は、弁護士業務だけではありません。裁判官、検察官になってからの経験も、評価の対象になりえます)。

なので、今回、新卒市場ではダメだったとしても、司法修習や弁護士登録後の経験次第では、再チャレンジで内定を得られる可能性も十分にあると思います(加えて、再チャレンジまでの期間を利用してTOEFL又はTOEICのような英語能力を示す客観的数値を上げておくこともオススメします)。

就活生の立場からすれば、
― 生え抜きでパートナーになるのが美しいキャリア
と思っているかもしれません。実際に、アソシエイトの転職市場では、
― 転職回数が多いとキャリアに傷が付く、
と言われることもあります。転職をネガティブ要素として捉えるパートナーはいるかもしれませんが、それは、「パートナー=上司」から見た「アソシエイト=部下」の人事管理面における考慮要素です(転職者は帰属意識が薄くて再転職しやすい等)。

自分自身がパートナーになってしまえば、弁護士としての能力を評価される相手は、クライアントになります。クライアントからみれば、
― 転職回数が多い
というのは、別にネガティブな要素ではなく、
― 多様な経験をしており、視野も人脈も広い
というポジティブな要素として評価してもらえることすらあります。

大胆に言えば、
― 生え抜きのパートナーよりも、転職経験があるパートナーの方が実は弁護士としての魅力が大きい、
とすら言えると信じてもらえたら、と思います。

だからこそ、
ー 「四大落ちました」さん、新卒採用市場では四大とのご縁がなくて、ラッキーでしたね!
というのが私の伝えたい感想です。

司法試験に無事に合格されたら、修習で良い経験と出会いを得て、研修所を出たら、他の事務所/裁判所/検察庁/企業で、有意な経験を積んでくれることを期待しています。

そして、法律実務家としての経験を少しでも積んでみた後で、司法試験受験時点であなたが目標として掲げていた「四大に行くキャリア」を改めて考え直してみていただけたら、と思います。その時点でのキャリアに専念できていれば、「なぜ、自分はあの頃、そんなに四大にこだわっていたんだろう」と思うかもしれません。

もし、その時点でもまだ「四大に再挑戦したい」というお気持ちが強く残っているならば、改めてご相談いただければと思います(その時は私も人材紹介業者として具体的な中途採用の選考を突破する方法を一緒に検討させていただきたいと思います)。


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