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法律事務所の面接の質疑で「先生はなぜこの事務所を選ばれたのですか?」と尋ねるのは愚かだと思うけど、良問としての機能する場面も

法律事務所への訪問において「何か質問はありますか?」と言われた就活生の中には、面接官である弁護士に対して「先生はなぜこの事務所を選ばれたんですか?」と尋ねる人がいる。

私は、この種類の質問を愚かだと思っていた。面接官がパートナーであれば、彼・彼女らが就活したのは、もう10年以上前のことであり、業務分野の流行も変化しているし、事務所の規模も、パートナーへの昇進しやすさも今とは異なっている。また、アソシエイトであっても、「応募者に対して当事務所への関心を維持してもらう」という任務を負っているため、当たり障りがないことをコメントするに決まっている。時代も状況も異なる中での回答を、就活生がこれからのキャリア選択にどう参考にするというのか?現在に通じる教訓としてどんな先例としての価値があるのか?何を聞きたくて、この質問をするのか?

でも、この質問がされたからといって、面接官が「君、それを聞いてどうするの?」と質問の意図を問い質してくるわけではない。「そうだねぇ」と言って、パートナーが回想モードに入って、当時の採用担当パートナーが誰だったかなどの昔話を始めてくれることもある。アソシエイトが所属事務所のポジティブな側面を強調した回答をしてきたのに対して、就活生が更問いで「その気持ちは裏切られることなく、この事務所に入所されたことを後悔されていないんですよね?」みたいに念押しをしてみると、大筋では「そうだね、パートナーは全員優秀だし、先輩アソシエイトからも色々学ぶこともあるので、成長できていると思う」みたいな前向き回答しか期待できなくとも、その回答の細部には「・・・・という点では少し予想外だったけど」みたいなちょっとしたネガティブな印象の断片を潜り込ませてくれる誠実なアソシエイトもいる。

そういう意味では、「なぜこの事務所を選んだか?」という逆質問に対する回答の文言(議事録を作成したら掲載されるような答弁)自体にそれほどの先例価値はないと思うけど、それを回答しようとするパートナーやアソシエイトの態度を見ていると、その人柄が垣間見えることがある、というのはそうかもしれない(用意しておいた答弁を回答するだけの弁護士よりも、考え込んだり、言葉を選んで迷ったりしている弁護士のほうが誠実に見える)。

ま、いずれにせよ、面接終了後の所内会議で「あの、『先生はなぜこの事務所を選んだのですか?』って聞いて来た質問はよかったよね」となるような質問ではない。

なので、「書類選考の結果でオファー当確ラインにいる就活生」ならば、ちょっと上から目線で、この種の質問をして、事務所側の弁護士が「オファーを出した場合にはぜひ受諾してもらいたいので、丁寧に回答して印象が悪くならないようにしよう」と思ってくれている状況で、どんな態度で回答がなされるのかを眺めてみるのもよいかもしれない。


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