弁護士のファーストキャリアは何でもいい?(長島・大野法律事務所のファウンダーが司法試験合格後にまず会社に就職していたのを知っていますか?)
商事法務主催の無料オンラインイベントが11月11日(金)18時(午後6時)から開催される。「これからの時代に求められる企業法務弁護士のキャリアと働き方」という大上段に構えたタイトルの座談会に、ぼくも登壇者の一人に呼んでもらえて、先週、顔合わせのオンライン打合せがあった。
イベントでは、キャリア論として「どのような事務所がファーストキャリアによいか?」といったテーマが想定される。
でも、実際のところ、大成した弁護士について言えば、
とも思わされる。
ぼくは、商事法務ポータルの「業界研究」欄でインタビューを担当させてもらっているが、インタビューの中で紹介している事例だけでも、たとえば、
長島・大野法律事務所のファウンダーである長島安治弁護士は、大学3年次に司法試験に合格して(司法修習に行く前に)三菱化成工業で2年間勤務されており、司法修習を経た弁護士登録後には、特に誰か指導者から弁護士業務を教わったわけではない、と語っておられるし(商事法務ポータル「著者に聞く!長島安治弁護士『日本ローファームの誕生と発展」(前編)」2018年12月31日付)
日比谷パーク法律事務所の松山遙弁護士は、裁判官から転身されて、現在では、大企業の社外役員も務めながらコーポレートガバナンスの第一線で活躍されているが、その基礎になっているのは、裁判官時代に担当した、退職慰労金贈呈の株主総会決議取消し事件(南都銀行事件)であり、株主総会指導については、中村直人弁護士に「何を勉強したらいいですか」と尋ねたら「う〜ん、総会事務局は場数だからね〜」と言われてしまった、という経験談を述べられているし(商事法務ポータル「著者に聞く『はじめて学ぶ社外取締役・社外監査役の役割』松山遙弁護士①」2018年11月26日付)、
シティライツ法律事務所の伊藤雅浩弁護士は、前職(コンサルタント)時代に、システム開発紛争に「訴外伊藤」として巻き込まれてしまって、自らの弁解を主張するために民事訴訟に関わっていった体験がきっかけとなり、ITを専門とする弁護士の道を歩まれて、アソシエイト時代には(指導を受けるというよりも)弁護士経験が浅い当時から、荷が重いと感じるような事件を任されたことが成長につながったと語っておられる(商事法務ポータル「新規分野で企業から信頼されている司法修習60期代のリーガルアドバイザーは誰か?伊藤雅浩弁護士」2022年10月21日付)。
このようにパートナーとして大成した弁護士の話だけを聞いていると、
という気がしてくる。
でも、それは「優秀なパートナー(=直接にクライアントから信頼を受ける立場)」についての話かも。
ぼくら凡人は、まずは、
「優秀なアソシエイト」
を目指さなければならず、「優秀なアソシエイト」として評価されるためには、
「雇用主であるパートナーから「使いやすそう」と思ってもらえる経験を地道に積み重ねること」
が大事であり、それには
「どのようなファーストキャリアを歩むべきか?」
という問題設定が、わりとすんなりと当てはまりそうな気もする。
ただ、ここで気になるのは、
「『優秀なパートナー』って、『優秀なアソシエイト』の延長線上にある存在なのか?」
という問題。
もしかしたら、
「『優秀なパートナー』は、新人弁護士時代から、その素養がある」
「 『優秀なアソシエイト』の道を極めても、下請け弁護士スキルをさらに磨いていくだけであり、いつまでたっても『優秀なパートナー』にはたどり着けない?」
という疑いも湧いてくる(が、それを突き詰めると迷宮入りしてしまいそうなので、今は「仮に下請け業務を続けても、それでも間接的にはクライアントの役に立つ存在なんだから、一人前の弁護士(≒パートナー)である」と理解してこれ以上に考えるのはやめておこう)。