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備忘録:弁護士の転職市場(セカンドベスト同士のマッチング成立の難しさ)

法律事務所や弁護士としての価値を、大学の成績のようにランク付けすることは不適切であるが、現実には、法律事務所側は転職希望者を、転職希望者側は法律事務所をランク付けして見てしまうことが多い。

これを、上位から、「優上」、「優」、「良」、「可」と区分した場合に、最優秀の「優上」とみなされる法律事務所と、「優上」とみなされる転職希望者のマッチングは比較的にスムースである。お互いに「第一志望」同士であるからである。

では、次の区分である「優」の法律事務所と、「優」の転職希望者のマッチングもスムースにいくか?といえば、そう簡単にはうまくいかない。自分たちの業務にプライドを持つ「優」の法律事務所にとっては、「いずれは『優上』とみなされるように事務所を成長させたい」という希望を抱いているため、「第一志望」の候補者は「優上」の転職希望者となる。同様に、自分の潜在力に自信を持っている「優」の転職希望者にとっては、「『優上』とみなされている法律事務所で働くことによって、自分も『優上』の弁護士に成長したい」という目標を持っているため、「第一志望」の転職先は「優上」の法律事務所となる。それが故に、「優」の法律事務所と、「優」の転職希望者は、相思相愛とはならずに、お互いに「悪いわけではないが、ベストではない」という位置付けに評価されてしまう。

この「セカンドベスト同士のマッチング」の成立は意外に難しい。法律事務所側は「理想を追求し続けても仕方がない」として採用の目線を下げてくれても、転職希望者側は簡単には目線を下げることができない。ここで、転職希望者側が「ランク化された世界からの離脱」「違う価値基準での勝負」を志向すると、「独立」や「インハウスへの転向」プランが浮上してくることになる。

「優」の法律事務所は、理想の候補者(「優上」の転職希望者)を追い求めるのではなく、現実的に人手の確保を最優先課題とすれば、採用の目線を下げて、「優」に留まらずに、「良」の転職希望者にも対象を広げて採用活動を行うことになる。「良」の転職希望者まで対象を広げれば、「良」の転職希望者にとってみれば、「優」の法律事務所は、ランクアップにもつながるように見えるため、ここでは、わりとマッチングが成立しやすくなる。

ただ、採用の成否は、転職後のパフォーマンスを見て初めて検証することができる。人手の確保のためには、対象を下位ランクまで広げることが求められるが、それは「玉石混交」であり、「掘り出し物」の「磨けば光る玉」に当たる可能性もあるが、「手をかけて指導したけど、石だった」ということも頻繁に生じる。結果的に、「良」の候補者では、「優」から「優上」を目指す法律事務所の業務の水準について来られないことが明らかになることも多い(すぐに退職勧告がなされるわけでなくとも、パートナー側は「彼/彼女を将来のパートナー候補としてうちの事務所のクライアントを任せることは難しい」と判断するだろうし、アソシエイトはパートナーからの要求水準の高さを「パワハラ」「ブラック事務所」と感じて転職先を探すことにもつながる)。

人材紹介業者としては、「優」の法律事務所と、「優」の転職希望者に対して(お互いにとって、相手が「欠点のない理想的な第一志望」ではないとしても)「相手の欠点を自分が補うことによって、一緒に『優上』へのランクアップを目指して成長しよう」という前向きな意欲を持ってマッチングを成立させていけたらいいな(そして、「優上」の法律事務所と、「優上」のアソシエイトを増やしていくことができたらいいな)と思うのだが。

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