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法律事務所において「個人事件」ができることはどこまで重要なのか?

法律事務所のパートナー層において、
― アソシエイトが、事務所の仕事とは別に、自分に来た仕事を個人で受任すること
に対しては、賛成派と反対派の両方が存在している。

賛成派は、
― 事務所事件をパートナーの庇護の下に担当するだけでなく、自分がクライアントに対して全面的に責任を負う形で判断して案件を遂行することは、それがどんなに小さい事件であっても、弁護士としての成長に役立つ、
という発想を持っている。

他方、反対派は、
― せっかく全力投球することで成長できる事件が事務所にあるにもかかわらず、事務所事件をサボって、アルバイト感覚で小銭稼ぎの個人事件をやるのは、成長の機会を逃すことにつながる、
という発想である。

いずれも、アソシエイトのキャリアを考えての親心(又は建前論)であり、事務所の経営事情も加味すると、少し違う理由付けも見えてくる。

賛成派は、
― いつまでもアソシエイトとして事務所事件をあてがってもらえると期待されても困る。いずれは自分で稼げるようになって、事務所に経費を入れる立場に成長してもらえなければならないんだから、少しずつでも「外貨」を稼ぐ練習を進めてもらいたい、
という事情もある。

また、反対派からは、
― 事務所案件を処理してもらうために事務所から高い給料を支払っているんだから、事務所事件を最優先にしてもらわないと困る。いずれ独立したいと思って個人事件に熱心なのだとしたら、将来の商売敵に事務所のノウハウを伝授することは控えなければならない、
という発想にもつながる。

結局のところ、「アソシエイトが事務所事件の時間を減らしてまで個人事件をするべきかどうか?」の当否は、ケースバイケースの判断であり、
― 今、抱えている事務所事件がどれだけ面白くて成長できる案件か?
― 個人事件が(単なる小銭稼ぎではなく)アソシエイトが「自分がやらなければ」という必然性を感じる事件かどうか?
によって判断が異なるものである。

(極端な例で言えば、「離婚相談を20件も同時並行で担当させられている」とか「同種の少額訴訟30件で代理人をさせられている」という事情ならば、事務所事件を減らして、毛色を違う個人事件を担当することが望ましいだろう。また、仮に事務所で大型M&A事件を担当させらもらっているような繁忙期であっても、学生時代からの親友が「お前を見込んで相談したい」と頼って来てくれたのであれば、睡眠時間を削ってでも対応してあげたいところである。)

そういう意味では、
― 個人事件は例外なく禁止
と言われてしまうのは辛いが、
― 個人事件をすることは(利益相反等がなければ)可能(アソシエイトが原則自由に個人事件をしている場合に限らず、許可制でそれほど実績がない場合も含めて)
ならば構わない、というのが現在の自説である。


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