インハウスへの転職

備忘録/弁護士の就職と転職/「インハウスへの転職=集中投資」vs「法律事務所における営業=分散投資」

弁護士からのキャリア相談では、
「法律事務所で仕事を続けていくべきか?それともインハウスに転向するべきか?」
という問いを受ける場面が数多くあります。

文脈としては、相談者が
「自分は営業が苦手だから、インハウスに行けば、売上げを積み上げる苦労から逃れられる」
ということが多いです。つまり、
「インハウスに行けば、より安定したキャリアを歩める」
という期待が隠れています。

ただ、個人的なイメージでは、
― インハウスに行くというのは、雇用主一社に対して、自分の将来の時間をまとめ売りする集中投資であり、
― 法律事務所における営業は、依頼者に対して、自分の将来の時間を部分的に売却する分散投資
という感覚を抱いています。

つまり、
― 本当に、自分のキャリアを尽くすに値するクライアント(経営者、事業、上司)を見付けられたならば、インハウスは幸せだと思うが、
― インハウスになると、クライアントが一社に限定されて、自分の上司が尊敬できない人に固定化されてしまった時のリスクは大きい(=経済的にも一社に依存しているため、転職先を決めずに、現職場との関係を悪化させることもできない)
と思います。

逆に、
― 法律事務所は、日々、営業の苦労があるが、一社に限定するわけではないので、「嫌なクライアントでも、自分のすべての時間を捧げているわけではないので、その場限りで、お客様扱いしても自尊心は傷付かない」という面がある、
という気楽さもあります。

もっとも、これまでのように、
― インハウスとして、クライアント1社(上司ひとり)に限定、
と、
― 法律事務所で、二桁数のクライアントと薄く広く接する、
という二者択一の関係ではなく、その中間形態として、一社だけに経済的に依存するわけでもなく、かつ、クライアントとの間の薄い関係ではなく、
― クライアント数社(一桁数)との間で、それぞれの企業と、インハウスのように深く付き合う、
というのに、最適解がありそうな気もします(伝統的な顧問契約型の企業法務弁護士は、それに近い勤務形態を実現できているのかもしれませんが)。

実際、会社員であっても、副業/兼業が解禁されていくことで、「複数社へのインハウス的な勤務形態」も実現可能性は高まるのかもしれません。

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