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弁護士の就職と転職Q&A(対話形式編)「法律事務所をすぐに辞めたら履歴書に傷が付くか?」

司法修習(75期)の弁護士からの転職相談も増えて来た。その中で、中規模事務所の1年目アソシエイトからの相談に対して、歯切れの良い回答ができずに、相談者にはもやもやが残ってしまった。自分自身の頭の整理を兼ねて、質疑の模様を対話形式で再構成してみたい。

75期弁護士
「弁護士登録をしたばかりの法律事務所をすぐに辞めてしまったら、履歴書に傷が付きますよね?」

西田
「すぐに辞めても、良い事務所に第二新卒で採用してもらえて、二箇所目の法律事務所で長く働けたら、別に履歴書に傷が付くことはないと思うけど。修習生時代に法律事務所を見る目がなかった、というのは仕方ない面もあるし。二箇所目の事務所でうまく行って、もう転職をする必要がなければ、もはや「履歴書を提出して書類選考をされる」という場面には遭遇しないで済むよね。」

75期弁護士
「2つの目の事務所も短期間で辞めることになってしまうと、二回目の転職活動では不利になりますか?」

西田
「就活で失敗して転職したにもかかわらず、二箇所目の事務所選びもまた失敗してしまったのはなぜか?という理由は気になるところだよね。下手をしたら『1回目の転職についても、事務所の側に問題があったわけでなく、本人の側に何か問題があったのか?』という疑いの目を向けられてしまうことがあるかも。」

75期弁護士
「短期間での退職が続いてしまうと書類選考段階で落とされてしまいますよね。」

西田
「書類選考を『短期で何度も転職しているから、うちに来てもすぐ辞めちゃいそう』という理由で落とされることを気にする人は多いけど、一流の法律事務所の中途採用における書類選考では、そもそも、基本スペックで『光る』ところがない候補者は検討の俎上に載せられない、ということも多いかな。基本スペックがパッとしなければ、別に転職歴がなくても、特に面接に呼んで話を聞いてみたいと思わないから。」

75期弁護士
「基本スペックというのは?」

西田
「大学名、予備試験に合格しているか、合格しているならば、短答、論文、口述の順位とか、ロースクール名、ロースクールの成績、司法試験の総合順位とか、英語のスキルを示すTOEIC、TOEFLのスコアとか。これらは新卒採用で重視される指標だけど、新卒採用をしている事務所においては『中途採用だからといって、新卒採用よりもハードルを下げるのは良くない』と考える先も多いと思う。」

75期弁護士
「予備試験や司法試験の成績がよければ、転職歴が多くても、大丈夫ですか?」

西田
「成績がよくて光るところが見出せるならば、そこで初めて『何度も事務所を辞めるけど、うちに来ても大丈夫か?』を考えることになる。現職がどんな事務所で、どんな理由で辞めたいのか?を確認することになると思う。」

75期弁護士
「どういう事務所を、どういう理由で辞めたいならば、納得してもらえるのですか?」

西田
「典型的には、『優良なクライアントを抱えていて、リーガルサービスの質は高いけど、ボス弁がパワハラで、アソシエイトが毎年潰れていくことで有名』という事務所からの脱出希望者だと、納得しやすいね。『あの先生の下ならば、辞めたくなるのも仕方ないね』『うちはあそこよりは楽だから』と言えるし。」

75期弁護士
「現所属事務所は、リーガルサービスの質がイマイチなので、もっと上を目指したい、という理由はダメですか?」

西田
「リーガルサービスの質が低い事務所にいると、その事務所での経験値をプラス評価することが難しくなるね。そうなると、新卒と同じようにポテンシャル採用として基本スペックだけの勝負になりそう。」

75期弁護士
「自分で案件を回している、という経験は評価してもらえますか?」

西田
「アソシエイトに事件を丸投げしているような事務所ならば評価してもらえるだろうけど、優良なクライアントへの質の高いリーガルサービスを売りにしている事務所では、やっぱり、『きちんとした教育を受けている』と認めた上での次の段階の問題かな。自己流で仕事をする癖が付いてしまったアソシエイトに対して、それを矯正するのにも手間を要するから、下手をすればマイナス評価になってしまうかも。採用する側としては『うちと同程度以上の質のリーガルサービスをする訓練を受けていてほしい』と思うから。」

75期弁護士
「教育が行き届いていない事務所に勤めているならば、すぐに辞めたほうがいい、ということですか?」

西田
「そこは、将来プランにも関わる問題かな。早期に独立したければ、自分ひとりで案件を回す訓練を早く始めた方がいい。他方、一流の企業法務系事務所への転職を考えているならば、2年目、3年目と年月が経過するうちに、希望先事務所の生え抜きのアソシエイトはその間にも優れた経験を積んで、どんどん自分よりも先に行ってしまう。年次が上がるほどに、生え抜きのアソシエイトと比較された場合の自分の相対的な評価が低くなってしまう。」

75期弁護士
「格上の事務所への転職を狙う場合には急いだ方がいいですね。」

西田
「留学に行きたいという希望はあるの?」

75期弁護士
「行けるチャンスがあれば、行ってみたいです。」

西田
「事務所からの留学を考えているならば、早い時期での移籍を考えた方がいいかもね。そもそも、アソシエイトの留学制度が整っている事務所は限られているし、中途採用者に留学のチャンスを与えてくれるとしても、入所してすぐに権利を与えることは難しい。通常、『移籍後に3〜4年は働くこと』が留学の前提になると思う。生え抜きのアソシエイトは、先輩アソシエイトの誰と誰の次に自分が留学に行ける、という順番に期待を抱いているから、中途採用者が来たことによってそれを遅らせられるのは困る、と考えるだろうし。」


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