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『ひまわり求人』掲載先へのカジュアル面談:八雲法律事務所

『ひまわり求人』を読む(9)八雲を題材にして」に対しては、大手法律事務所に勤めるアソシエイトからの感想が届きました。それには、ポジティブとネガティブの2側面がありました。

まず、ポジティブな側面としては、「既存の法分野はすでにパートナー枠が埋まっているので、シニア世代からのクライアント承継を狙う以外に売上げを獲得する方法がない。新規分野を開拓しなければならないとは思っていた。」「その点、IT、インターネット系は、もともとシニア世代が苦手とする分野なので、サイバーセキュリティに顧客開拓のチャンスがあるというのは納得できる。」という内容でした。

もうひとつが、ネガティブな側面。それは「とはいえ、なんだかんだいって、サイバーセキュリティでも、大手事務所にいるほうがチャンスに恵まれるのではないか?」「それに、サイバーセキュリティの第一人者であるパートナーがいても、アソシエイトは、いつまでもその下請けを続けるだけで、将来的に自分で案件を取れるようになる気がしない。」という内容でした。

なるほど。。。。そう言われたら、単に、ひまわり求人の広告だけに基づいて、「大手事務所に所属するアソシエイトにとっても、八雲法律事務所に応募することがキャリア形成上のチャンスがある」と無責任に述べるのはよくないような気もしてくる。せめて、自分で訪問して話を聞いてくるべきではないか?

そんな思いを抱いて、八雲法律事務所代表の山岡裕明弁護士に事務所訪問をお願いしたところ、快く取材に応じて下さいました。

そのカジュアル面談の結果として、私が抱いた感想は、

・ 八雲法律事務所は、サイバー攻撃対応の専門性を維持してトップ・ランナーとして走り続けていくだろうと期待することができ、大手法律事務所に比べてもその優位性は揺らぐものではない、

・ これから八雲法律事務所に参画していく若手弁護士にとっても(事務所案件とは別に)個人事件も受任しながら、独自の専門分野を開拓していくチャンスが存在する、

というものでした。

丁度、面談を終えて本記事を執筆している最中に、政府からの「サイバー攻撃被害に係る情報の共有・公表ガイダンス検討会の開催について」というニュースリリースに接しました。

検討会の委員の顔ぶれを見ると、弁護士として選ばれた3人の委員には、森・濱田松本法律事務所、西村あさひ法律事務所という大手法律事務所と並んで、八雲法律事務所から選出されているのを確認して、自分の解釈に裏付けを与えてもらった気持ちになりました(所属事務所のウェブサイトによれば、森・濱田松本のシニア・アソシエイトである蔦大輔弁護士には近畿財務局や総務省の個人情報保護推進室に勤務されたご経験が、西村あさひのカウンセルである北條孝佳弁護士には警察庁で勤務されたご経験があるとのことです。これに対して、米国のカリフォルニア大学バークレー校の情報大学院でMaster of Information & Crybersecurityの修士号を取得している八雲の山岡弁護士は、他の弁護士委員のお二人とは専門とする分野を棲み分けているようにも感じられました)。

以下では、八雲法律事務所訪問を経て、上記の感想を抱くに至った事情を箇条書きに列挙してみます。

とはいえ、サイバーセキュリティに無知な私が、山岡弁護士からの話を聞いて自分なりに解釈した内容に過ぎません。そのため、誤解に基づく事実誤認が含まれているかもしれませんが、それは全て筆者の責任に基づくものであることをあらかじめお詫びさせて下さい。

1.  事務所の専門性

「八雲法律事務所は、サイバーインシデントレスポンス(サイバー攻撃を受けた企業のインシデント対応)における国内最高水準の専門性を備えており、今後も、その専門性を磨き続けていける可能性は高い」と考えた事情は、以下のとおり。

・ 八雲法律事務所においては、これまで「サイバーインシデントレスポンス(サイバー攻撃を受けた企業のインシデント対応)」を中核として業務がその大半を占めてきたが、今年度は、企業法務を専門とする弁護士チームが新たに参画したことにより、M&Aやコーポレート分野の業務拡大が見込まれている。

・ サイバーインシデントレスポンスには、「セキュリティベンダーのアサイン」、「日本国内の当局への対応」、「GDPRに基づくEU当局への対応」、「取引先からのNDA違反に関するクレームや紛争対応」、「消費者からの個人情報漏洩に関するクレームや紛争対応」、「コールセンターの設置」、「ダークウェブの調査」等の多数の関係者を巻き込んだ対応が求められるため、司令塔の役割を担うプレイヤーが必要となる(米国では、それを「インシデントレスポンスマネージャー」と呼ぶこともある)。

・ 八雲法律事務所は、そのインシデントレスポンスマネージャーとしての役割を果たしている。

・ サイバー攻撃は、被害を受けた企業(及びその役員)にとって、最終的には自己の法的責任を生じさせかねない問題であるため、法的責任を回避するという目的から逆算して対応を検討することが求められる。

・ 特に、米国では、インシデントレスポンスの過程におけるコミュニケーションが、事後的にディスカバリーの対象となる可能性が高い。そのコミュニュケーションの守秘性を保持するためにも、インシデントレスポンスマネージャーに弁護士を選任して「弁護士・依頼者間秘匿特権」メリットがあると言われている。

・ 日本においては、秘匿特権のメリットがあるわけではないが、八雲法律事務所の弁護士には、技術の裏付けがあるために重宝されている。

・ 企業の情報システム部門やセキュリティベンダーは「企業法務の世界で著名かどうか?」ではなく、「こいつは技術のことがわかっているのかどうか?」で弁護士を品定めする。インシデントの発生報告に対して、「こことここを重点的に調べる必要がありますね」とセキュリティの専門家の感覚に即した指示ができると、「この弁護士はわかっている」と信頼してもらえる。

・ そのため、インシデントが発生した企業の顧問弁護士からの紹介を受けて、八雲法律事務所が受任することもある。その場合、八雲法律事務所の役割は(法務部というよりも)主として情報システム部門のニーズに応える業務が仕事の中心となるため、既存の顧問弁護士との間でも協調関係を維持することができる。

・ ランサムウエアのように深刻なサイバー攻撃に対して、八雲法律事務所では弁護士チーム(代表弁護士+中堅弁護士+若手弁護士)での対応がなされている。企業側からは、経営層からは取締役専務が来て、担当部署としては、情報セキュリティ部門、法務部門、広報・IR部門等が関与するため、対策会議には企業側からの出席者数は20名規模になる。

・ また、海外にも子会社を抱える大企業グループをクライアントとする場合には、海外子会社へのサイバー攻撃もスコープに入るため、八雲法律事務所では(代表弁護士の留学経験も活かして)欧米のローファームとも連携して対応できることが強みとなっている。

・ 他方、Emotet(エモテット)やECサイトからの情報漏洩のような事件では、対応の方針も類型化されている面も大きいので、八雲法律事務所では、中堅弁護士や若手弁護士が主任となってインシデントレスポンスのハンドリングをすることもある(技術が深く関わるイシューについては、要所要所で代表弁護士のレビューを経ることになるが)。

・ なお、八雲法律事務所の代表弁護士は、2016年に、日本で初めてアマゾンジャパンからレビューの投稿者情報の開示請求での認容判決を獲得したとの報道が弁護士業界で広く認知されたこともあり、発信者情報開示については、現在でも「米国のディスカバリー制度を利用して巨大IT企業への情報開示請求を行いたい」という、同業たる弁護士からの相談が続いている。

2.  若手弁護士のキャリアの将来性

「八雲法律事務所に所属する若手弁護士には、事務所案件とは別に、個人事件を受任していきながら、独自の専門分野を開拓する機会も存在するであろう」と考えた事情は、以下のとおり。

・ 企業へのサイバー攻撃が行われた時、八雲法律事務所には、セキュリティーベンダー、被害企業の顧問弁護士等の様々なチェネルを介して依頼が来ている。そのため、八雲法律事務所の若手弁護士には、サイバー攻撃対応の経験を積む機会が十分に与えられる。

・ また、八雲法律事務所においては、若手弁護士に対して、情報処理に関する資格取得が強く推奨されている。既に、情報処理安全確保支援士の資格までを取得している若手もいれば、現在、受験中の弁護士もいる。資格取得のために行う学習内容は、日々の実務に生かされ、実務での経験は資格取得の試験にも有益であり、座学と実務との間に相乗効果も認められる。そして、試験に合格して資格を取得すれば、本人は自信を抱くことができるだけでなく、情報システム部門やセキュリティベンダーの担当者との間で円滑なコミュニケーションを行えるようにもなる。

・ 八雲法律事務所においては、資格取得のための勉強時間の確保のための配慮もなされている。事務所所定の勤務時間は午前10時〜午後6時までとされており、それ以降の時間帯を技術の勉強、留学に向けた英語学習、個人事件の開拓などの自己研鑽・自己投資に費やすことができる環境が確保されている。

・ 八雲法律事務所が「事務所としての専門性」を追求する分野は、サイバー攻撃への対応を中心に特化されているため、その他に事務所がノウハウを蓄積してきた分野(発信者情報開示やシステム開発紛争等)については、若手弁護士が自由に個人事件として「横展開」を行うことができる。実際にも、八雲法律事務所に数年在籍している弁護士の下には、同期や知り合いの弁護士からの事件の紹介が相次いでおり、それは同弁護士の「個人事件」として受任されることになる。

・ 八雲法律事務所は、技術に詳しいという評価を得ていることから、エンジニアとの人脈が豊富である。そのため、若手弁護士は、エンジニアを依頼者とする相談を受けて、システム開発紛争分野での経験値を深めていくこともできる環境にある。

・ また、個人情報保護法の改正にも伴い、八雲法律事務所には、コンサルティングの相談が増えている。どの法律事務所でも、プライバシーポリシーぐらいならば、先行する他社事例を真似ることで、形だけのアドバイスをすることはできるかもしれないが、八雲法律事務所にいれば、システム上、データがどのように扱われているのかを技術的に理解した上でのアドバイスが可能であり、かつ、「実際に情報漏洩や不正利用がなされた後の対応」を踏まえたアドバイスが可能である点で、他の法律事務所との差別化を図ることも可能である。

・ なお、八雲法律事務所はまだ若い事務所であるため、これまでに、若手弁護士を留学に送り出した実績があるわけではない。しかし、代表の山岡弁護士は、自身の米国留学が専門性の獲得と人脈の拡大に役立っていることを強く認識している。さらに言えば、八雲法律事務所は、今後の業務拡大の方向性を海外案件への対応力強化にも置いているため、若手弁護士が留学希望を示すことは、事務所の成長シナリオにも合致している。

3. 求められる人物像(若手弁護士のキャリアの将来性を含む)

カジュアル面談の感想に基づく雑感として、「このような人材が求められているのではないか?」について(若手弁護士のキャリアの将来性を含めて)補足しておきたい事情は、以下のとおり。

・ 八雲法律事務所においては、サイバーインシデントに対して、複数名で構成された弁護士チームで対応している。これから中途採用される弁護士にとっても、同種案件対応の経験豊富な弁護士の指導を得ながら案件に取り組むことができることから、未経験でも「別の形での貢献」ができる若手にはチャンスがある。つまり、「サイバーセキュリティ分野」については(その専門的知識や経験というよりも)「これから学びたいという意欲が高い」という点が重要であると考えられる。

・ 「別の形での貢献」ための素養としては、実は(特に「尖った経験」である必要はなく、むしろ)「伝統的な弁護士業務をするスキル」が高く評価される可能性がある。また、「インハウス経験」を評価してもらえる可能性もある。

・ 「伝統的な弁護士業務をするスキル」とは、通常のコーポレートロイヤーとしてのスキル、訴訟弁護士としてのスキル、労働弁護士としてのスキル、刑事弁護人としてのスキルである。というのも、八雲法律事務所は「大手法律事務所に比べて、伝統的な弁護士業務の基礎的訓練を積むのに秀でた環境」と言えるわけではない。八雲法律事務所が秀でているのは、「基礎的な訓練を積んだアソシエイトが自分で裁量を持って主体的に案件に関与する場数を踏める。」という環境を与えてくれるところにある。

・ 伝統的な弁護士業務の分野(ジェネラル・コーポレート、訴訟、労働、刑事)についての基礎的な訓練を積んだ上で、八雲法律事務所に参画すれば、これらを「将来に独り立ちするために掛け合わせる専門分野(例えば、「テック」×「労働」)」にも育てていくことができる。

・ ジェネラル・コーポレート分野を開拓したい若手弁護士にとってみれば、サイバーインシデント対応が経営層に「刺さった」クライアントからコーポレート業務を含めた対応を継続的に依頼される形での顧客開拓の方法が考えられる。また、サイバーインシデントのクライアントに限らず、八雲法律事務所での業務経験や情報処理関係の資格は、インターネット又はIT系のスタートアップからの信頼を得るのに大いに役立つであろう。

・ また、紛争処理対応を専門とする若手にとってみても、インターネット、SNS、電子メール等を通じたコミュニケーションの記録が証拠関係に占める割合が増えてくれば、デジタル証拠の収集や分析に長けていることは、他の訴訟弁護士との差別化を図ることができる可能性がある。

・ 「別の形での貢献」として「インハウス経験」を活かす方法には、「社内調整力」が挙げられる。サイバー攻撃への対応においては、社内の複数部署やセキュリティベンダー、関係当局等における多数の関係者とのコミュニケーションが行われる。これは「伝統的な弁護士業務をするスキル」とは異なり、大企業において社内調整に取り組んだ経験を活かすチャンスである(八雲法律事務所には、インハウス出身の若手弁護士が活躍している、という成功体験がある)。

・ 「インハウス経験」は、大量のデータを取り扱うIT企業が思い浮かぶが、関係省庁(個人情報保護委員会等)における任期付任用公務員としての勤務で得た知見や経験も八雲法律事務所で直ちに役立つものと言えそうである。

以上が、八雲法律事務所のカジュアル面談を終えた筆者の感想です。

なお、事務所の名称である「八雲」とは、島根県出身である代表の山岡弁護士が、(1)歴史的な意味では、「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を」の和歌に因んで、「八雲」が「出雲国」を象徴する言葉とされていること、そして、(2)現代的な意味では、「雲」が「クラウド」を象徴することから名付けられた、とのことでした。

山岡先生、大変にお忙しい中、私の素人質問に対して、初歩の初歩から親切かつ丁寧にご回答をいただきまして、どうもありがとうございました!

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