備忘録/弁護士の就職と転職/大手法律事務所出身者は第二新卒市場で価値が高いか
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備忘録/弁護士の就職と転職/大手法律事務所出身者は第二新卒市場で価値が高いか

法科大学院ができる前は、「司法試験合格者間の平等」は(相当程度に)保たれていたように思います。そもそも合格順位は本人にも知らされていなかったので、あるとすれば、ベテランが(基本書もロクに読まずに、予備校の授業だけで合格した)現役生に対して「どうせ丙案だろ」と悪口を言う程度でした(現役生側も「丙案でも早期に受かったほうが勝ち」と開き直ってました)。

ただ、法科大学院1期生が司法修習を終えて実務に出る2007年に、サブプライム問題が発生し、翌年にはリーマンショックが起きて、東京の企業法務系事務所も打撃を受けました。供給(新規弁護士登録数)が増えるのに、需要(法律事務所における採用人数)が減る、という意味で、司法制度改革は不幸なスタートを切らされたと思います。

その頃から、
「司法修習同期間の格差」
が広がりました。
(それ以前にも、「渉外事務所は、現役又は卒1合格者しかチャンスがない」と言われていましたが、それは、「一人前になるために年月を要するから、年輩者は適性がなかった時にやり直しがきかない」という理由が主でした。また、ベテラン合格者側には「早く一人前になりたいので、渉外事務所よりも中小の事務所で修行を積んでとっとと独立したい」という希望が強かったと思います。)

就職市場においては、
「司法試験の合格順位」
が参照されますが、大手事務所は、合格発表前に新卒採用活動を終えます。そのため予備試験合格者のウィンターアソシエイトを選ぶ際にも予備試験の合格順位が参照されて、法科大学院生のサマーアソシエイトを選ぶ際には学校の成績、GPAが参照されます。また、事務所によっては、成績だけでなく、インターン中の課題の成果や模擬内部会議を実施して、そこでの発言を参照することも行われています。

それだけの手間暇をかけているので、中小事務所からは、
「大手事務所の新卒採用選考を通過しているならば、それなりにまともな人材なのだろう」
という期待を抱くことになります(自分の事務所の仕事にプライドを持っている中小事務所からすれば、「大手事務所の選考すら通らない奴はうちではやっていけない」という言い方になるかもしれませんが)。

また、大手法律事務所には(全パートナーがそうとまでは言えなくとも)高いクオリティで仕事をするパートナーが何人もいます。そのため、中小の事務所からは、
「大手事務所で働いていたならば、仕事の成果物に対する目線も高いだろう」
という期待を抱きます。

人材市場で、多くの採用担当者が信じている経験則のひとつに、
「若い頃に丁寧な仕事をしていた弁護士が、経験を経て、重要度が低い部分には力を抜くようになることはある。でもその逆はない。もともといい加減な仕事をしていた弁護士が、あとから、仕事を丁寧にすることはない。上から下はあっても、下から上はない。」
というものがあります。

大手事務所のアソシエイトには「一人前になるのが遅い」とか「プロジェクト全体を見ずに、自分に切り出された部分の仕事しかしていない」という批判もありますが、「うちに来てから、もう一度、鍛え直してやる」という気持ちで受け入れる中小事務所からすれば、(下手に自己流の仕事スタイルで案件を回している、個人事件的経験豊富な若手よりも)半人前でも丁寧な仕事をしようとするアソシエイトのほうが使いやすいと言えます。
(実際、先輩弁護士からしてみれば、「経験/クライアント扱い」については、アソシエイトの仕事を補完してあげることができますが、「レビューを任せたときのアソシエイトの見落とし」は、アソシエイトに任せた仕事を自らすべてやり直さなければ防ぐことはできません。)

っと、以上、「大手法律事務所に入れば、そこでパートナーにならずに、途中で転職するにも優位性がある(だからこそ、就活で人気がある)」と考える点を備忘録として。


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弁護士(第一東京弁護士会)で、キャリアコンサルティング&ヘッドハンティングをしています。著書「新・弁護士の就職と転職」(商事法務、2020年)。商事法務ポータルに「弁護士の就職と転職Q&A」を連載中 https://www.shojihomu-portal.jp/gyoukai