(備忘録)「裁判官出身弁護士は、自己の経験を活かすことに無頓着である」という仮説について
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(備忘録)「裁判官出身弁護士は、自己の経験を活かすことに無頓着である」という仮説について

西田 章..

弁護士のキャリアに関する雑談で「裁判官出身者は、真面目でピュアで、良い意味でも、悪い意味でも、自分の経験を活かすことに無頓着だよね。」という説を聞く。これは、ぼくのキャリアコンサルタントとしての経験にも符合すると思った。

裁判官出身の転職相談者との面談を振り返ってみると、ぼくが「裁判官経験を活かすならば、訴訟に強い事務所を希望されるんですよね?」と尋ねるのに対して、「いえ、インハウス希望です。」との回答が返って来たり、「刑事裁判官だったならば、不祥事調査とかコンプライアンス周りを専門にされたいんですよね?」との質問を投げても、「いや、商社希望です。」といった回答が来て、「?」と思った記憶が思い出される。

思うに、キャリア・プランニングに対する「公務員的な身分保障のある年功序列」のイメージを無意識に引きずったままに、民間の人材市場に転向してきている、という疑いが強い。裁判所では、裁判官たる身分を継続する限りにおいて、組織が決めた人事を受け入れることが求められていて、本人がその人事を「受け入れ難い」と判断した時に、自分の希望(転勤がないとか、ワークライフバランスとか)に合った職場環境を求めて退職する。

民間に転じた後の立場については、「自分の意思で進路を決めなければならない。」ということに対する自覚はあっても、「組織に属していれば、自分には、自分の年次に相応しいポストをあてがってもらえる」という公務員的身分保障の発想を捨てられないでいるように思われる。「修習期が下の後輩に追い抜かれる」「依頼者から求められることがなくなれば、自分の仕事がなくなる」という危機感を持ち合わせていない(又は、その危機感を抱く必要があるのは、法律事務所だけであり、会社に入れば、その心配がないという淡い期待を抱いている)。それが故に、新卒採用の就活に挑む大学生のような純真さで、転職活動に臨まれているように見受けられる。

でも、本人がそのような「振り出しに戻る」型の発想で、会社員(総合職)へのキャリアチェンジに挑戦したとしても、受入企業側において、「法科大学院(既習)2年」+「司法試験受験(最短)1年」+「司法修習1年」+「裁判官経験X年」のトータル5年以上もの経験を活かせるようなポジションを用意することなんて出来るのかなぁ(=滅多に出て来ない「裁判官出身者」という特異な属性の候補者のためだけに、採用担当者が知恵を絞ってくれることを期待できるのかなぁ。同じ年度に大学を卒業した同期の新卒入社組がすでに会社でバリバリと活躍している、又は、すでに留学に出ている年次のスーパーレアな属性の社員の処遇について)

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西田 章..
弁護士(第一東京弁護士会)で、キャリアコンサルティング&ヘッドハンティングをしています。著書「新・弁護士の就職と転職」(商事法務、2020年)。商事法務ポータルに「弁護士の就職と転職Q&A」を連載中 https://www.shojihomu-portal.jp/gyoukai