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【「弁護士の就職と転職」note】外資系法律事務所の東京オフィスにおけるパートナーのラテラル採用

欧米系のロー・ファームからは、定期的に「東京オフィスに日本法弁護士のパートナーをラテラルで採用したい」という相談を受けますが、この種のサーチはそう簡単には成功しません。

というのも、欧米系のファームは、
「自国においては高い評判を誇っているため、東京オフィスのラテラル採用においても、トップ水準の能力と経験を備えた弁護士でなければ、候補者となる資格がない」
と考えているのに対して、国内で大型又は最先端の案件を扱っている弁護士は(少なくともディール系では)大手法律事務所に集中しており、大手法律事務所で活躍するパートナーにとってみれば、
「欧米系に移籍したら、アワリーレートも跳ね上がるし、マンパワーも不足する」とのシミュレーションが成り立つために、
「敢えてリスクを取ってまで欧米系に移籍する理由がない」
という事情を抱えがちです(さらにいえば、定年との関係でも、日本の大手事務所に残っていれば、65歳まではパートナーとして働けるところ、欧米系のロー・ファームではもっと早くに現役を引退することが求められる(特に、ロックステップの年功序列的な報酬体系が色濃く残っている英国系ファームでは、50歳代半ばにはパートナーポジションを明け渡すことが求められる)と聞きます)。

そのため、もし、リクルータが「なんとかパートナーの移籍を実現させて成功報酬まで獲得したい」と願うならば、
― 所属する法律事務所でトラブルを起こして現職には居づらくなっているパートナーを狙う、
とか、
― それほどの実績はないけど、英語力はあるので、もしかしたら、欧米系ファームの選考を通過できるかもしれないパートナーと通謀する(本人がほんの少ししか関与していないような案件でも本人の実績として申告する)
という方法が頭をよぎります。ただ、そう簡単に欧米系ファームの厳しいパートナー選考を突破することはできませんし(選考では「なぜそんなに実績があるパートナーがアソシエイトも連れずにひとりで移籍してくるのか」と疑問を投げかけられたりします)、仮に突破できても、移籍して数ヶ月もすれば、本人の実力不足はバレてしまいます。

一般的にはそのような傾向が見られる中だからこそ、5月にこの移籍が発表された時には驚かされました。

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