備忘録/弁護士の就職と転職/シニア・アソシエイトの苦悩
苦悩

備忘録/弁護士の就職と転職/シニア・アソシエイトの苦悩

大手法律事務所のアソシエイトからは、彼・彼女らがその年代に特有の悩みを抱えていることを教えてもらいます。

1年生は、司法修習とはまったく違う実務に戸惑って、長時間オフィスに滞在してはいるものの、貢献できている手応えもなく、やりがいも感じられずに、「進路選択のやり直し」のリセットボタンを押したいと考える人が一定割合で存在します。

それから、(i)徐々に企業法務の仕事の仕方がわかってきて、少しずつ仕事を任せられるようになって、「とりあえず留学までは頑張ろう」という短期目標を据えて仕事に本腰を入れていくタイプと、(ii)「どうしてもこれは自分のやりたいことではない」と見切りを付けて、早期の移籍に向けて具体的に動き始めるタイプに分かれるようになります(特に「移籍先事務所からの留学」を視野に入れておくためには、移籍先で留学に出してもらえる想定年度から逆算して「早期に移籍したい」という希望が強まります)。

いずれにせよ、「留学に出れば、一旦は息継ぎできる」という目標をぶら下げておけるからこそ、心身に多少の無理をさせてでも、日々のハードワークを乗り切る動機付けが働きます。

これに対して、留学帰りのシニア・アソシエイトは、より深刻度が増した悩みを抱えています。事務所に復帰してすぐに、複数のパートナーから案件を振られて、一気に、余力がなくなってしまう人がいます。余っているジュニア・アソシエイトを入れても戦力にならないので、自分の仕事は楽になりません。かといって、単価が高いシニア・アソシエイトは入れにくい。パンパンになっても、「仕事を断ったら、これから先に控える、パートナー審査に悪影響を及ぼすかも?」という不安があり、新件の受任制限がかかるまで案件を受け続けて、疲弊していっきます。

今のパートナーたちだって、そんな時期を乗り越えたから今がある、という見方もあります。ただ、昔は、「パートナーになったら、少しは楽になる」とか「パートナーになったら、もっと稼げる」という夢を抱くことはできました。

それが、今のシニア・アソシエイトの中には、その見通しも得られずに苦しんでいる人が多く見られます。事務所が繁盛していれば、パートナーになっても、下にアソシエイトを入れることもできずに、シニア・アソシエイトと同じく、すべて自分で案件を回さなければならない日々が続くかもしれません。逆に、東京オリンピックが終わったら景気が落ち込んで、案件が干上がってしまうかもしれない、パートナーになってしまったら、もはや同分野の先輩パートナーから案件を振ってもらうことすらできなくなるかもしれない、という不安も存在します。つまり、「景気がよければ、よかったでハードワークで楽にならない」「景気が落ち込めば、経済的に成り立たない」という、どちらに転んでも、良いシナリオを想像できない、という状況に陥っている人もいます。

ぼくも、企業法務の弁護士の成長過程では、一定期間の「ツラい時期」は避けられないと感じています。ただ、その「ツラさ」が、本人のキャリア目標に向けて、積み重なってくれる、先につながる「苦労」であってくれたらいいのですが。。。


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弁護士(第一東京弁護士会)で、キャリアコンサルティング&ヘッドハンティングをしています。著書「新・弁護士の就職と転職」(商事法務、2020年)。商事法務ポータルに「弁護士の就職と転職Q&A」を連載中 https://www.shojihomu-portal.jp/gyoukai