リファレンスチェック

備忘録/弁護士の就職と転職/リファレンス・チェック

外資系企業では、採用選考過程の終盤に、候補者の職場の上司等から、候補者の仕事振り等に関する聞き取り調査を行う慣行があります。最近は、日本企業でも、このようなリファレンス・チェック、バックグラウンド・チェックを採用する先が出て来てります。

このようなリファレンス・チェックは、これで高い評価を得たら合格する、という類のものではありません。「既に書類選考と面接審査で実質的には要件をクリアしていると思われる候補者について、特に大きな問題がないことを職場の上司や同僚からも念の為に確認しておく」という程度の位置付けです。

ただ、「転職=悪」という認識も残る日本社会において、(すでに何度かの転職を経て、「元上司」がいる場合ならば、「元上司」に依頼できる場合を別として)「まだ現職に退職意思を告げていない段階で、現職の上司や同僚にリファレンス・チェックの照会先になってもらうことを依頼できるか?」という問題があります。

現職での候補者の仕事振りを高く評価してくれている上司を照会先として、転職希望先に対して、高い人物評価の回答をもらえたらベストですが、現職の上司が「転職なんかせずに現職に残って一緒に頑張ろうよ!」というリアクションだった場合には、別の問題が生じてしまいます。そのため、実は、「現職で候補者を低く評価している上司」を照会先とするほうが、上司としても「こいつなら退職されても構わない」「退職してくれたら、ヘッドカウントが空くので、別の人を雇うチャンスが生まれる」「すんなり退職してもらうためにも、転職希望先からの照会にも良い評判を回答したい」という動機付けが働くことになる、という、リファレンス・チェックの本来の目的とは真逆のリアクションを誘発する状況が作出される、とも言えそうです。

まだまだ転職が一般的ではない日本社会において、どうすれば、リファレンス・チェックを実質的に機能させることができるのか。悩ましい問題だなぁ、と感じます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?