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法律事務所の採用面接で、就活生が質問しがちだけど、面接官に響かない質問の代表例は「出向」

弁護士のキャリア形成にとって、「ジェネラリストか?スペシャリストか?」は最重要テーマである。伝統的通説は、いわゆる「逆T字型キャリア」であり、
― まず、ジュニアのうちは、幅広く経験を積んで(底辺に長めの直線で横棒部分を形成して)
― その上で、自分が専門とする分野の経験を高く積み上げていく(真ん中に縦棒部分を伸ばしていく)
というイメージが存在する(渉外事務所では、かつて「留学まではどんな事件でも担当して、留学後には専門分野を意識して案件を受けていく」と言われていたが、今の大手事務所では、ジュニア・アソシエイト時代からプラクティスグループに配属されることが一般化している)。

ここで、第二段階の「どうやって専門分野を磨くか?」という手法として、最もわかりやすい手法が「出向」である。これには、
― 法務省に出向して会社法立案担当者となったおかげで、会社法の専門家となった事例
― 金融庁に出向して金商法立案担当者となったおかげで、金融規制法の専門家となった事例
― 公取に出向したおかげで、独禁法の専門家となった事例
― 企業に出向したおかげで、出向後に当該企業を大口クライアントとして開拓した事例
などの成功例が積み重ねられている。

なので、シニア・アソシエイトになってから、「パートナーになる前に、官庁又は企業に出向して専門性を高めておくべきかどうか?」というのは、切実な問題意識に基づく検討課題である。

ただ、これを「新卒採用」の就活時に質問として聞いてみても、採用側にはあまりピンと来ない。
というのも、企業法務系事務所においてパートナーたちは、
「うちの事務所で真面目に仕事をしていれば、弁護士としての適切な経験を積めるはずである」
と考えてアソシエイトを指導している。これに対して(事務所での本業についての質問を差し置いて)真っ先に「出向制度はどうなっていますか?」という質問を受けると、
「え?うちの事務所での本業に興味はないの?本業よりも、企業や官庁への出向に興味があるの?」
という疑念を抱かれてしまう。

なので(「出向」は。中長期的にはキャリア形成に資する論点になりうるから、興味があるのはわかるけど)就活段階においては、
― あくまでも、本業は事務所でのクライアントワークである
という点を意識した上で面接に臨まれることをアドバイスしておきたい(出向制度について詳しく尋ねるのは、「内定をもらった後に、その事務所のオファーを受諾するかどうか?」の段階になってからのほうが無難かも)。


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