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『ひまわり求人』を読む(8)のぞみ総合を題材として

今では、「危機管理・不祥事調査は弁護士の職務領域の一つである」という認識が一般化しているが、弁護士の職域をここまで広げることができたのには、のぞみ総合法律事務所の創設者である、矢田次男弁護士の功績が大きい。

インターネット上には、矢田弁護士が検察を辞めて弁護士に転じた経緯が語られている、2009年当時のインタビュー記事を見付けることができる(Attorney’s MAGAZINE Online弁護士の肖像Vol.10)。

アトーニーズマガジン矢田次男

以前は、ジャニーズ事務所所属の芸能人の不祥事の記者会見に矢田弁護士が同席している姿がメディアで紹介されていた印象が強く、「名誉毀損」と題する事務所名義の優れた書籍が知れ渡ったことと相俟って、のぞみ総合に対しては、刑事事件と著名人のプライバシー侵害を専門分野とするブティック事務所というイメージが抱かれることもあった。

矢田弁護士は、今は、日本大学のガバナンス体制の在り方を見直すために設置された「日本大学再生会議」の議長を務められており、個人の権利侵害の代理人に留まらず、不祥事を生まないような体制作りの専門家としての地位を確立されている。

日本大学再生会議

ただ、のぞみ総合は、代表弁護士の個人事務所ではない。ひまわり求人に以下のように記載されているとおり、企業法務全般を取り扱える総合事務所へと発展している。

ひまわり求人の取扱事件

これだけの幅広い事件を扱う弁護士の人員構成について、ひまわり求人には、以下のとおり記載されている。

ひまわり人数構成

事務所の人員構成をもう少し具体的にイメージするために、事務所のウェブサイトに紹介されている所属弁護士の経歴を頼りに、パートナーと、カウンセル・アソシエイトを修習期の順番に上から並べてみると、以下のようになる。

のぞみ総合パートナー期別構成(少し右)

オブカウンセル・アソシエイト期別構成

このように修習期別に図示してみると、のぞみ総合が、組織の永続性を感じさせるようにバランスのよい形で発展していることがよく理解できる。

のぞみ総合の専門分野に対しては、前述のとおり、矢田弁護士のメディアへの露出が多かったが故に「ヤメ検が集まった刑事事件に強い事務所」というイメージが強かった。捜査機関の手法やメディア対応を熟知した検察出身者が依頼者の信頼を獲得していったという流れは歴史的経緯としては正しいのだろうが、ひまわり求人の記載によれば、今の事務所の専門性を裏付ける弁護士のバックグラウンドは検察出身に偏ったものではないとのことである。

ひまわりアピール

そこで、事務所のウェブサイトの弁護士紹介に基づき、パートナーの官公庁での勤務経験を、先ほどの期別構成図に書き加えてみると、以下のとおりになる。

のぞみ総合パートナー期別構成(少し右)(官公庁経験)

「危機管理対応」が求められる分野は、警察・検察の捜査対象にとどまらず、金融庁や公正取引委員会が所管する法規制にも拡大しており、今後は、さらに気候変動や自然災害をも含むものであることからすれば、東日本大震災の大規模被災自治体(宮城県石巻市)への赴任を含めて、のぞみ総合のパートナーのバックグラウンドの多様性は時代を先取りしたものであると評価できる。

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